そして、現在の土地所有制度の根本的な考え方は近代国家が成立した明治維新以降から続いている。1889年に制定された大日本帝国憲法では、二十七条一項に「日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ」、同二項に「公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル」とあり、この頃から個人による土地所有権の自由が前提となった。

現代において、土地所有権の自由が空き家、空き地、耕作放棄地などさまざまな問題を引き起こしている。また、日本では土地の権利が「自由」かつ「私」が前提であることから外国人や外国資本が自由に土地の売買をすることが可能である。

3.海外資本による土地の買収

毎年多くの外国人が北海道ニセコ町を訪れ、スノースポーツを楽しんでいる。かつて、日本企業によって開発されたニセコのリゾート施設は、日本経済の停滞期に次々と外国人や外国法人の手に渡り、今では外国資本のホテルが立ち並ぶようになった。

既に開発されたリゾート地や温泉地だけではなく、未開発の森林の取得も活発化している。このような動きに対して、林野庁や農林水産省が森林や農地の取得状況に関して毎年調査を実施している。

表1に2006~2022年までの外国資本による森林取得状況を示す注4)。この表は、参考文献に基づき、著者が整理したものである。この他にも、国内の外資系企業と思われる者による森林買収も行われており、同期間の累計では302件、6,734haと報告がある注4)。外国資本による全森林取得面積の約7割が北海道である。先のニセコ町では、森林の153ha(東京ディズニーランドの約3倍の面積)を外国法人または外国人が取得している。

次に農地について述べる。2017~2022年までの外国資本による農地取得状況は1社、0.1haである注5)。また、外国法人又は居住地が海外にある外国人と思われる者が議決権を有する法人又は役員となっている法人による農地取得は、同期間の累計で6社、67.6ha(売渡面積5.2haを除く。)である注5)。このように、農地においては外国資本により農地取得はそれほど進んでいないことが確認できる。