吉野らしい共生の姿を形作った植林
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吉野は豊かな森林資源を有する地域でしたが、戦国時代、畿内で城郭や寺社の建築に重宝されたため、天然林が減少してしまいました。そこで、木材の需要に応えつつ天然林を守るために、杉の植林が始められたと言われています。
この植林では、修験道の信仰が根づく吉野山の歴史や自然景観に配慮し、影響の少ない山麓で人工林を徐々に広げていく形で行われたのが特徴です。
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前述したように、吉野山の山上には「金峯山寺」をはじめとする神仏が巡る原生の吉野の世界があります。一方、山麓には林業を中心とした産業が広がり、人々の活気や生活風景が見られます。
人と自然が寄り添って生きてきた共同体の姿を垣間見ることができるのも、日本遺産・吉野の価値ではないでしょうか。
憧れにも似た思いを抱く。吉野独特の風情
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吉野は、日本の歴史や信仰の形成において重要な役割を果たし、多くのドラマを生み出してきました。吉野には言葉でうまく表現できない独特な空気が漂っています。
特に私がその空気を感じたのは、「高木山展望台」を訪れたときです。展望台からは北西に大阪や奈良の都市を見渡し、南東には近畿の屋根と呼ばれる大峰山脈と世界遺産・大峯奥駈道を望むことができます。
この場所は、俗世と神仙の世界をつなぐ門のようであり、春にはこの世の風景とは思えないほど美しいピンク色に包まれます。この光景は、まるで神への崇敬に似た憧れの対象であったのだろうと感じざるを得ません。
独特の情緒が根付く、吉野という地。ぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょうか?
吉野
- 住所:奈良県吉野郡吉野町吉野山2498
- 営業時間:24時間
- TEL:0746-32-1007(吉野山観光協会)
- 公式サイト:吉野山観光協会
文・写真・土庄雄平/提供元・たびこふれ
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