こう見ると書店と出版ビジネスはびっくりするほど遅れているのです。機会ロスが生じているだけではなく、売れ行きの正しい把握がしにくいわけです。当然、出版社の戦略も勘に頼らざるを得ないのです。

ではこれを変える方法です。まず、小ロットで受注型にすること、売れ筋の本は返本不可とする代わりに書店の利益率を上げ、無駄発注を減らすこと、取次は発注の仲介だけにとどめ、書籍は出版社から書籍にダイレクトに発送すること、電子データ保存により30年たった本でも入手可能にすることだと思います。

実際にKadokawaは書籍を受注後、印刷製本を48時間で出荷完了する仕組みを作り上げています。それこそ、出版社オンラインストアがあれば発注すれば数日後に刷りたての本をゲットすることも物理的に可能なのです。ではなぜ、取次が必要かといえば数千社ある出版社の能力がばらばらなのでどんな小さな出版社の出版物でも要望に応じて取り纏めて書店に卸す媒介が必要だからです。ちなみに日本の書店数は現在8000店ぐらいですから書店2-3店に出版社が1つあるという超いびつな市場構成こそ問題だといえるでしょう。

まずは書籍産業を再生させる、そして人々に書籍をお届けしやすくすることで忘れかけていた本を読む癖をつけることを再度啓蒙したいところです。

私は以前、新聞(メディア情報)と雑誌と書籍の特徴をうまく利用すべし、と申し上げたことがあります。最新情報はメディアの報道がベストです。その情報を深堀するのが雑誌、そしてそれら深堀情報の基礎を作るのが書籍だと考えています。我々は基礎研究が大事だ、とよく言いますが、日々の生活においても基礎力である知識と知恵と学識で博識になろうとする努力は欠かしてはいけないと思っています。

書籍を読まなくなった現代人に書店が減った責任を押し付けるのではなく、書籍産業がどうやったら産業として再生でき、読んでもらえるようにできるか、知恵を出すことが大事でしょう。本を読みなれていない人には300ページが限界だと思いますが、書き手は500ページを押し付けてくる、これでは萎えるということもわかってもらいたいのです。書籍産業は書き手を含め、認識を新たにしてもらいたいというのが一介の書籍を扱う者の意見であります。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月30日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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