圧倒的に足りてない“場数”

 宇宙に向けたロケットの打ち上げは残念ながら我々の“ルーティンワーク”にはまだなっていない。

 世界には約15億台の自動車があり、おそらく4万機の航空機がある。対照的に宇宙へロケットの打ち上げは人類史上まだ2万回未満である。

 自動車では依然として多くの問題が発生しており、より厳格に規制された航空機の世界でもリベットの緩みからパイロットの操縦システムに至るまで今もなお問題が発生している。

 しかし我々は地球上のあらゆる国でこれらの車両や航空機の問題に関して1世紀以上の経験を持っている。つまり問題はあれど、その解決に取り組んできた“場数”をたっぷりと積んでいるのだ。自動車と航空機の運用は我々にとってすでにルーティンワークなのである。

 一方でロケットについてはまだまだ圧倒的に“場数”が足りていないことは明白である。

 したがってロケットの打ち上げや天体への着陸など、宇宙飛行に関することの大部分がコントロールできると考えるのは時期尚早であり非現実的ともいえそうだ。我々はまだ宇宙探査の初期の開拓時代にいるのである。

 人類が本格的な宇宙文明を築き上げるには、数々の大きな課題を克服しなければならない。長期間、長距離の宇宙旅行を可能にするためには解決すべき課題がまだまだ山積しているのだ。

 その問題のいくつかは、より優れた放射線遮蔽、サステナビリティ、自律型ロボット、原材料からの空気と水の抽出、無重力下での生産能力など、実現可能な領域内にあるもののように見える。しかしそのほかには、超光速旅行、瞬間通信、人工重力など今はまだSFな未来技術も残されている。

なぜ月面着陸はいまだに難しいのか? 成功率50%… 意外な理由が判明
(画像=画像は「Wikipedia」より、『TOCANA』より 引用)

 それでも進歩は小さな一歩を刻みながら少しずつ大きくなっていく。エンジニアや宇宙愛好家は、宇宙ミッションに知恵、時間、エネルギーを注ぎ続け、今後も僅かずつであれ徐々に信頼性を高めていく。つまり“場数”は着実に積み上げられていくのである。そしていつの日か、宇宙船に乗るのが車に乗るのと同じくらい安全になる時代がやって来るのだろう。

 9月7日には鹿児島県の種子島宇宙センターでJAXAと三菱重工業が開発したH2Aロケット47号機の打ち上げが成功し、搭載された無人月探査機「SLIM(スリム)」が年明けにも月面着陸を見込んでいる。成功すればインドに続き日本が遅れ馳せながら月面軟着陸に成功した5番目の国となる。失敗を糧にした“朗報”に期待したい。

参考:「The Conversation」ほか

文=仲田しんじ

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

提供元・TOCANA

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
航空機から撮影された「UFO動画」が公開される! “フェニックスの光”に似た奇妙な4つの発光体
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
ネッシーは巨大ウナギではない! 統計的調査結果から数学者が正体を予測
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?