地球誕生から46億年。この長い年月の中で文明を築き上げたのは人類しかいない。人類の直接の祖先である新人類が誕生したのがわずか20万年前。地球の歴史から見れば、人類の歴史はほんのわずかでしかない。ここで1つの疑問が浮かんでくる。本当に人類以前に文明は存在しなかったと言い切ることはできるのだろうか?
過去にNASAゴダード宇宙研究所の気象学者ゲイヴィン・シュミット博士と、米・ロチェスター大学の天文学者アダム・フランク教授が、科学誌「International Journal of Astrobiology」に、人類以前の文明の存在を示唆する極めて斬新な論文を公開し、大きな話題となったことがある。
米誌「The Atlantic」オンライン版によると、フランク教授らは、まず、人新世(人類が地球環境に大きな影響を持つようになった近年の地質学的時代区分)が、未来に残す痕跡は何かと考えた。たとえば、建築物や機械製品などが思いつくが、数百万年後に残っている確証はない。フランク教授によると、最有力候補として挙がったのは、化石燃料を燃やした際に生成される放射性炭素だという。
化石燃料を燃やすと炭素が大気中に放出され、これが同位体に分解されていく。より多くの化石燃料が燃やされると、大気中において同位体の占める割合も大きくなる、「シューズ効果」と呼ばれる現象が起こる。また気温上昇も放射性炭素の増加に伴うため、長期に渡って観測することが比較的容易であり、未来の科学者は人新生における大気の大きな変化に必ずや気付くだろうという。
そして、この方法は人類以前の文明を探るためにも使うことができる。人類以前に顕著な気温上昇や放射性炭素量の増加が見られれば、少なくとも化石燃料を使用した文明がかつて存在した1つの証拠になるというわけだ。
そして驚くべきことに、5500万年前にそんな時代があったのだ。これは「暁新世・始新世境界で突発的温暖化事件」(PETM)と呼ばれ、まだ原因が特定されていない地球史上のミステリーだ。この期間、地球の気温は急激に上昇し、現在の気温よりも15度も高く、南極でさえ21度の気温があったという。また、炭素と酸素の同位体比率が、人新世、つまり現在と近かったことも判明しているそうだ。