「顔を映さない」と言われた相手の連絡先をもらっていなかったのか?

 今回の最大の問題は、親切な男性のおかげで迷子になった子どもと父親が再会できたという「いい話」について、取材したディレクターもアナウンサーも当初はそれほど重要視していなかったのではないかということです。上野公園の花見会場のシーンでは最高にホットな出来事でした。そうであれば、取材者は後日談を聞けるよう自分の名刺を渡して、父親の連絡先を聞いておくべきでした。そして、もしも「顔出し」について何か言っていたという場合は、直接連絡するという程度のことは、すぐにやるべきです。また、放送する前に相手側と連絡を取っていれば、今回のトラブルは未然に防ぐことができたはずです。あるいは相手側が約束に反して「顔出しされた」と怒ってきた場合でも、SNSで公にされる前に番組側に直接届いたはずです。SNSにクレームが投稿され、テレビ朝日の取材の不適切さが広く知られることになってしまったのは、取材の際にそうした丁寧な対応をしていなかったことが原因です。

 取材班が、仮に「顔出ししないでほしい」という父親からの要請を全然聞いていないとしても、こうした小さな子どもが迷子として登場して被写体になるケースでは、あとから電話などでその後の様子を聞いたり、放送の許諾を取ったりするような「人間関係」を作っておくべきでした。インタビューしたら、しっぱなし、連絡先も聞かないまま。そうした乱暴な取材に終始し、丁寧な取材をしなかったことが最大の落ち度だと思います。

『モーニングショー』では4月初めにも水原一平容疑者の違法賭博をめぐってロサンゼルス・タイムズの記事をきちんと読まずに「誤報」をして訂正・謝罪をするという問題が起きたばかりです。まったく同じ間違いがNHKで起きており、それを丸写しして誤報につながったことは明らかです。ネットにある情報を丸写しして、自分で確認もしない。そんないい加減な姿勢が今回の相次ぐ謝罪につながっています。

『モーニングショー』はスタジオでの討論の豊富さや「切り口」など、見ていて感心させられることが少なくありません。一方で、こうした「易きに流れる」ことからくるミスやトラブルが最近は目につくようになりました。特にSNSがこれほど発達した時代になると、「丁寧さ」を欠いた取材は番組にとっては命取りになることを肝に銘じてほしいと思います。

(文=Business Journal編集部、協力=水島宏明/上智大学教授)

提供元・Business Journal

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