なぜ「確認できない」のに謝罪したのか、その発言は二次被害を招く恐れ

 これに対してテレビ朝日が公式に反応したのは4月19日(金)です。

「4月8日の放送で花見会場での迷子の親子について放送しましたが、その際にインタビューをした父親の男性から『絶対に顔を映さない』という条件で取材に応じたにも関わらず、顔を出して放送されたとご指摘を受けました。ご指摘の点について社内で取材担当者から複数回聞き取りを行いましたが、その結果、男性に取材をお願いした際に顔を映さないと約束したという事実は当社としては確認できませんでした。

 ただし番組としましては、今回、男性は迷子のお子さんと再会したばかりという特殊な状況下で、そのような場合、心情に配慮してインタビューの条件について、念を押して確認するなど、より丁寧な作業を心がけるべきだったと考えています。今回取材に応じていただいたにも関わらず、男性ならびにご家族にご不快な思いをさせ、ご指摘を受けるような事態を招いてしまったことを深くおわびいたします」

 そういってスタジオで頭を下げたのは草薙アナでした。言い訳がましい「おわび」です。本当は自分たちに非はないのだけど、「ご不快な思い」を抱かせたから、おわびしていますと言いたそうな文章です。

 よく考えてみれば、テレビ朝日のこの対応にはかなり大きな疑問があります。一つは、スタジオで頭を下げた草薙アナ自身が迷子の娘と父親に現場でインタビューしていたことです。つまり草薙アナは、テレビ朝日の「社内」で「複数聞き取り」を行った「取材担当者」にあたります。その取材担当者が自分の口で「顔を映さないと約束したという事実は当社としては確認できませんでした」と言っているのです。おかしなことではないでしょうか。

 草薙アナは、あくまで取材された側からクレームを受けている「当事者」であり、第三者ではありません。ここで会社の見解を対外的に語る人間としては「不適格」です。あくまで可能性の話ですが、彼が会社の聞き取りに対してウソをついている可能性もゼロではないのです。「顔を出さない」という口約束をしたのか、しなかったのかは、録音音源などの証拠がない限り、言った・言わない、聞いた・聞いてない、と水かけ論にしかなりません。今回は証拠がなかったので、その場にいたスタッフの「証言」に基づいて「約束は確認できなかった」と結論付けたようです。当事者であるアナウンサーを「対外的な発表」の場で「会社の顔」として使ってしまうテレビ朝日や『モーニングショー』のリスク管理の“いい加減さ”には驚きます。

 もう一つは、公共の電波で「顔を映さないと約束したという事実は当社としては確認できませんでした」と伝えてしまったことです。クレームをした男性やお子さんの顔は4月8日の放送でばっちりと映っています。「当社として確認できません」ということは、ひょっとするとその男性自身がウソを言っている可能性がある、とわざわざ公共の電波で広く表明しているようなものです。現在、SNSでの誹謗中傷が大きな社会問題になっていることを認識しているはずのテレビ朝日が、そんなことをしてしまうとは、私も驚きました。それは男性やその家族に対する二次被害を引き起こしかねない「不適切な対応」だと断言できます。