長距離攻撃作戦は、核・ミサイルの近代化と増大する保有量への対処として、また、日米同盟関係を維持する観点から、戦略守勢の防衛態勢の下でも行わざるを得ない作戦行動である。
もし「共同作戦に参加しなかった場合には、おそらくタダ乗りを許さない米国の対日世論は沸騰し、日米同盟関係の維持に重大な影響を与える」に違いない。それこそ、『アメリカが日本を捨てる日』である。
なかでも深刻なのが、台湾有事を巡る問題である。
自国の軍事力に自信を持った中国が、その核心的利益を守るべく台湾侵攻に着手した場合、そして台湾と国際社会がこれに全力で対処を開始しているという情勢の中で、米国以上に曖昧な対台湾政策をとり続けている日本が、国家レベルでこの問題に対処する準備が十分にできているとは到底思えない。日本では政治的な大混乱が起こる可能性が高い。
前述のとおり、米中対決の最前線となる日本が、台湾危機において台湾防衛に関与をすることができなければ、直接介入をするであろう米国の政治的な信頼を大きく損ない、日米同盟関係は破綻する可能性が高い。一方で、日本が台湾防衛に直接関与をすれば、中国の軍事的な脅威を直ちに被ることとなる。
そのうえで、廣中元空将は同書第5章を、こう締める。
日本は、地政学上、また、日米同盟関係上、自ずから台湾危機の当事国となるとの覚悟が何より重要である。
以上の趣旨を踏まえての発言なら、私も「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と考える。これまで私が「台湾有事は日本有事ではなく、極東有事である」と訴えてきたのは、「台湾有事は日本有事」と切り取られ、独り歩きすることで、「事前協議」や中国による核恫喝といった重要な論点が吹っ飛んでしまったからである。
けっして、日本で「政治的な大混乱が起こる可能性」を否定したわけではない。それどころか、廣中先輩が指摘するとおり、「日米同盟関係は破綻する可能性が高い」と危惧している。それこそ『アメリカが日本を捨てる日』となろう。
加えて、私も「中国の軍事的な脅威を直ちに被ることとなる」とも危惧している。拙著がサブタイトルで掲げたごとく、そのとき、日本の「戦後」が終わる。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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