「攻勢」に出るようになった政府自治体:デマ情報撃退の情報発信強化

従来の政府・(地方)行政は、デマや風評加害が発生していても「国民・住民の皆さんに誤解が生じないよう正確な情報の発信に努めていく」といった態度であり、発信源に対して攻勢に出る、ということには及び腰であることが通常でした。

今回の岸田総理の動きは、発信者の名指しをしないものの、具体的なデマに関して直接的に注意喚起をするなど「攻勢」に出たものと言えます。

実は、こうした動きは初めてではありません。

元首相5人が欧州委員会委員長に向けて脱原発に舵を切るよう呼び掛ける書簡の中で福島第一原発の事故に関して「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」という虚偽情報が書かれていた問題では、政府や各党・各議員が直接抗議しています。

「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か 282頁

すると、2月1日には山口壮環境相が事実上の反論書簡を5人に送付したことが報じられ(「差別偏見を助長し『適切でない』 首相経験者5人所管に環境相」)、翌2日には自民党の高市早苗政調会長が記者会見で抗議を表明し、岸田文雄総理大臣も国会での日本維新の会の足立康史議員の質問に答える形で「いわれのない差別や偏見を助長することが懸念されるものであり、適切ではない」と答えた

行政はこれまで、こうした問題に「風評」とは言っても「偏見」「差別」と表現したことはなかった。これらの言葉を首相が選んだ意味は、あまりにも大きいと言えるだろう。

このような大きな流れが生まれたことで、当事者である福島県もようやく沈黙を破った。

翌日の3日に福島県の内堀雅雄県知事は、「がんと被爆(ひばく)の関連が認められない」として『科学的知見に基づき、客観的な発信をお願いする』と文書で5人に要請した

最近では福島県議会が、”Fukushima Water”の記事見出し問題に関して、当初は「国や東電には正確な情報の発信に努めるよう求める」としていたものが、報道機関の側に対して「県として対応を検討する」という答弁がありました。

多くの被災者、住民の犠牲と各所の賢明な活動の末に、近時の政府行政が誤情報への対応・メッセージを「強化」したのだと考えると、感慨深いものがあります。

以上

編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年1月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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