ではウクライナを支援するアメリカはどういう立場か、と言えば支援支持派が民主党、支援懐疑派が共和党とされますが、共和党内部でもその温度差があります。トランプ氏支持層は強い懐疑派であります。共和党は議会でウクライナ追加支援予算を可決するには移民政策をより厳しくするといった条件をつけていますが、バイデン大統領がそれを飲めるとは思えず、時間だけが過ぎ、予算が底をつくという状況にあります。
「ウクライナもウクライナ」という点も当初からわかっていました。祖国防衛が自国完結型ではないのです。例えば日本が日露戦争をした時は資金こそ戦争国債に依存し、あるいは一部の資源は外国に依存したものの戦争の用具は原則自国で準備しました。203高地の戦いでは鉄砲の玉不足になりかけましたが自力で賄ったわけです。
戦争とは基本はそういうもので同盟国は側面支援はするも同盟国による実質的全面支援が功を奏することはあまりないのです。イラクやアフガン、ひいてはベトナムや朝鮮戦争などはアメリカが果敢に関与しましたが、良い結果をもたらさなかったのは戦争当事者との意識の差の問題なのだと思います。
イアン・ブレマー氏は最新の寄稿「弱まるウクライナ支援の危険性」で「ウクライナへの西側諸国の支援が弱まることで、24年はより破滅的な戦局に陥る懸念がある」と意見しています。私もこれに同意です。アメリカは24年は選挙イヤーであり、選挙は外交より内政が勝負どころなのです。極端な話、外交が華やかであることは構わないものの面倒なことは選挙が終わるまで先送りしたい、それぐらいの感じになります。よって個人的には選挙イヤー故に外交が動かない2024年を前提とするならばブレマー氏が指摘する破滅的戦局=ウクライナの敗戦がないとは言えなくなります。
プーチン氏は自身の大統領選挙が3月に終わればフリーハンドになり、仮に圧倒的支持を得れば国威発揚はしやすくなること、アメリカは11月まで選挙で忙しいことからその約半年は力関係が明白に変わる点は戦略上大きな意味を持つことになるでしょう。
その上、アメリカはイスラエルのこともどこかで収拾させねばならないでしょう。こちらは個人的にはさほど遠くないうちに停戦ないし、休戦になるとみています。ただ、その後、1月の台湾総統選の結果次第ではそちらへの外交的エネルギーを注ぎ込む必要に迫られる可能性もある点からバイデン氏の手腕をこれ以上期待するも難しいだろうという気がしています。
最近のバイデン氏は老化が進んだ気がします。気力で大統領の職務をこなしていますが、現実問題としてはこれほどの高齢の方にあれだけの激務をさせてはいけないでしょう。民主党は代替候補すら出せないところに弱みがあるともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年12月27日の記事より転載させていただきました。
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