フグは、フグ毒「テトロドトキシン」を自ら作り出しているわけではありません。
テトロドトキシンは、有毒プランクトンなどの海洋微生物が微量に作り出すものであり、それらプランクトンを食べる貝やヒトデの体内に蓄積されます。
そしてフグは、テトロドトキシンを含む貝やヒトデを好んで食べて、その毒を体内(主に肝臓や卵巣など)に蓄えているのです。
当然ながら、このテトロドトキシンを体内に取り込む過程で、フグ自身が悪影響を受けたり死んでしまったりすることはありません。
その理由は、テトロドトキシンとフグの特性にあります。
私たちの神経細胞は、外部からナトリウムイオンを取り入れることで情報を伝達しています。
そしてテトロドトキシンは、細胞の「ナトリウムイオンを取り入れる働き」を妨害することで神経に情報が伝わらないようにし、結果として麻痺を生じさせます。
しかしフグは、そもそもナトリウムイオンを取り入れる仕組みが人間を含む哺乳類とは異なっており、テトロドトキシンで麻痺しにくいと言われています。
さらにフグでは、肝臓でテトロドトキシンを排出したり、血液内のタンパク質がテトロドトキシンと結合したりして、テトロドトキシンの影響が抑えられています。
ちなみに、エサを厳選して育てた養殖のフグは、上記の理由から毒を持たないことで知られています。
一方で野生のフグは、海中の貝やヒトデから地道にフグ毒「テトロドトキシン」を手に入れており、この毒で天敵から身を守ることができます。
またフグ毒には、フグ自身のストレスを軽減させる効果もあると報告されています。
とはいえ、フグがフグ毒を取り入れるプロセスについては、まだよく分かっていない点が多く残っています。
そこで今回、東京大学の濵﨑恒二氏ら研究チームは、フグにフグ毒を与えた時に、腸内細菌叢がどのように変化するのか調べました。