CTBTOのフロイド事務局長は今年3月の国連の会合で「今日の不確実な地政学的状況は3年前よりさらに複雑となってきた」と正直に語っている。ロシアはCTBT条約から離脱し、中国は同国西部新疆ウイグル自治区にある核実験地を再改修、拡大している。中国の習近平国家主席が2013年に就任して以来、人民解放軍が核兵器の強化と増加に乗り出している。

要するに、「世界の核問題の拠点」ウィーンの外交実績は残念ながら乏しいのだ。‘会議は踊る’と揶揄されてきたウィーン外交の名誉回復は実現されていない。ウィーンのために弁明するならば、核問題は世界の強国の利害が直接ぶつかるテーマだけに、外交的成果を挙げることは非常に難しい。ワルツを踊っている時間などもちろんないのだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年8月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。