続いて彼らには、「ネガティブな気分を誘発するタスク(個人的な失敗を思い出して書き出すこと)」を行ってもらい、その後、「気分が良くなる将来の出来事」についても書き出してもらいました。

そしてこれらの実験から、参加者のナルシシズムのレベルと、タスクに現れる心理的機能の関連性を分析しました。

極度のナルシストたちは「非現実的な優越感」により気分を持ち直すのが得意

分析の結果、ナルシシズムのレベルが高い人は、それが低い人に比べて、大げさな言葉を使ったり、大げさな空想にふけったりする傾向が著しく高いと分かりました。

このことは、極度なナルシストが、誇大性(自分自身の能力や価値を実際以上に高く評価すること。非現実的な優越感)を示す傾向と合致しています。

また今回の研究結果により、ナルシストたちが示す非現実的な優越感(誇大性)が、彼らの気分を持ち直すのに役立っていることも分かりました。

一般的な人(ナルシストではない人)は、嫌なことがあった後に気分を持ち直そうとしても、そこまで上手にコントロールできません。

気分転換しようと努めても、ネガティブな感情がある程度残り、ポジティブな感情もそこまで高まることはないのです。

ナルシシズムのレベルが高い人が示す「非現実的な優越感」は、落ち込んだ時に気分を持ち直すのに役立っている
ナルシシズムのレベルが高い人が示す「非現実的な優越感」は、落ち込んだ時に気分を持ち直すのに役立っている / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

しかしナルシシズムのレベルが高く非現実的な優越感を示す人は、そのような一般人に比べて、ネガティブな感情を抑制し、ポジティブな感情を高めることができていました。

ナルシストたちにとって非現実的な優越感は、気分をコントロールするための効果的な手段だったのです。

ちなみに今回の研究では、一般的に広く言われる「ナルシスト」ではなく、病的なほどのナルシシズムを示す人に主に焦点を当てています。

一般的なナルシストは、「自己評価が高く、他人からの称賛や注目を求める傾向が強い」程度ですが、病的なナルシシズムを示す人は、より深刻であり、個人の精神的傾向や人間関係に深刻な影響を及ぼすことがあります。