移民はどこから?

ニューヨークタイムズによると、昨年ニューヨーク市にやってきた移民には、ベネズエラから亡命を求めてやってきた人々が多く含まれている。国際移住機関と国連難民高等弁務官事務所の共同で実施する「レスポンス・フォー・ベネズエラ人」によると、人口2,900万人のベネズエラでは、今年2月時点で700万人を超える難民と移民が国外に流出した。大多数はラテンアメリカに滞在しているが、米国までの長く危険な道のりを選ぶものも多い。

2015年から2018年までに南部国境で拘束されたベネズエラ人は100人程度だったが、2021年10月から翌年8月の間の拘束者は15万人を超えた。最近ではアフリカ諸国からも亡命を求める多数の人々が到着しているという。

なおアボット知事がバスを送り始めたのは昨年8月からだが、これらは市に到着する移民のほんの一部にすぎないという。民主党優勢のエル・パソも、本人の希望に応じてニューヨークに送っているほか、自力で辿り着く者もいるという。

保護施設が限界

市では移民の生活施設の確保のため、8月初旬までに新たに194のシェルターを開設した。7月中旬の報道によると、シェルターに暮らす10万5,800人のうち、5万4,800人が亡命希望者だった。

これまでホテルや学校の体育館、オフィスビルなどをシェルターに活用してきたが、今後は精神病院の駐車場など新たな場所に目を向けているという。クルーズ船や悪名高いライカーズ島の監獄に住まわせる案を検討していると報じられたこともあった。

ニューヨーク市では、1981年にホームレスの権利として確立された「Right to Shelter(保護の権利)」のもと、宿泊を希望する者にシェルターを提供することが義務付けられている。ブルームバーグによると、午後10時までに到着したホームレスの家族には、その晩にベッドを提供しなければならない。独身成人の場合、1日以内に受け入れなければならないとされている。

アダムス市長は5月、裁判所にRight to Shelterの修正を求めたほか、7月には子連れの移民の場所を確保するためとして、独身成人の亡命希望者の宿泊期間を60日に制限する計画を示した。こうした措置に対して、法的支援団体や権利団体は法的に対抗する姿勢を強めている。

アダムス氏は、今後も移民が到着し続ける場合、コストは120億ドルを超えると予測を示している。

亡命承認まで長い道のり

亡命希望者は申請中の滞在を許可されるが、裁判所による判断が下されるまでに3年から4年かかるという。今年3月から5月の間にニューヨーク市で提起された移民裁判は、3万9,000件に上っている。

この間、すぐに生活の糧を得られるわけではない。現在の規則では、亡命を申請した者が一時雇用許可を申請できるようになるまでに150日間待たなければならない。アダムス市長は、キャシー・ホークル州知事とともに、ホワイトハウスに対して就労許可申請の迅速化を働きかけている。

不法移民になるケースを懸念する声もある。亡命希望者は米国に入国後1年以内に申請をしなければならないが、追加の法的支援がなければ、多くの人々が期限を逃して不法滞在者になる危険があるとの指摘もある。