宇宙の「まとめ」です。
オーストラリア国立大学(ANU)で行われた研究によって、宇宙に存在するあらゆる物体のサイズと質量の関係を1枚の紙に並べた、最もスケールが大きい図表が作られました。
この図表を見れば、宇宙に存在するあらゆる物体のサイズと質量がどんな関係にあるかがわかり、私たちの宇宙の基本的な性質を視覚的に知ることができます。
ただ作られた図表は「素粒子から全宇宙」までを網羅する極スケールであるため、ぱっと見ただけではよくわかりません。
そこで今回は図表のどこに何があるかをわかりやすく説明し、「宇宙全体がブラックホールになる」ことを示唆する理由についても解説したいと思います。
研究内容の詳細は、2023年10月1日に『American Journal of Physics』にて「全ての物体といくつかの疑問(All objects and some questions)」とのタイトルで公開されました。
あらゆる物体のサイズと重さをまとめてみた
リンゴにはリンゴのサイズと質量が、人間には人間のサイズと質量が存在します。
リンゴや人間の種によって多少のバラつきがあるものの、直径が100光年のリンゴや数ナノメートルの人間のような変動はありません。
同様に地球や太陽のような星も、水素原子やウラン原子といった原子の場合も、変動幅は一定の範囲に閉じ込められています。
「そんなの当たり前だ」と思う人もいるでしょう。
しかしその当たり前が、何によって定められ、どんな傾向にあるのかは謎に包まれています。
そこで今回、オーストラリア国立大学の研究者たちは、宇宙に存在する全ての物体について、横軸にサイズ(半径)、縦軸に質量を設定した図表にまとめあげるという、極めて大胆な試みに挑みました。
全ての物体を1枚の紙の上にプロットすることで、私たちの宇宙について知られていない傾向や偏りが存在する可能性があったからです。
調査にあたってはまず、あらゆる物体のサイズと重さの概算が行われました。
たとえば人間は質量70kg・半径50cmの物体、クジラは質量1万kg・半径7mの物体とされました。
同様にウイルス、細菌、ノミ、惑星、恒星、さらには太陽系、銀河系、銀河団、宇宙大規模構造に対しても同じ概算を行い、横軸に物体のサイズ(半径)・縦軸に物体の質量を設定したグラフに書き込んでいきます。
すると興味深い事実が見えてきます。
サイズと質量の概算はかなりザックリしたものでしたが、ウイルス、細菌、ノミ、人間、クジラ、惑星、恒星のような、主に原子によって構成される物体は、おおむねグラフの同じ線上に並ぶことが判明しました。
これらは「原子によって構成されている」という共通の特性があるため、極端な外れ値を持たず、サイズと重さが素直に配列してくれたのです。
一方で、太陽系、銀河系、銀河団、宇宙の大規模構造など、より大きなスケールの場合には原子間の結合力ではなく重力によって結ばれています。
興味深いことに、それぞれの半径(サイズ)と重さを書き込んでいくと、こちらは別の直線上に並ぶことが判明しました。
さらにクォークや電子、ニュートリノなど素粒子をはじめとした小さな粒子たちをサイズと質量をもとに配置すると、また別の線の上に配置されていることが判明します。
この結果は、私たちの宇宙は原子の世界、重力の世界、小さな粒子の世界という3つのレベルが存在すること、そしてそれぞれが属する直線(傾向)があることを意味しています。