【概要】
30万年前から1万1700年前に生きていたボスコップ人の脳容積は現代人よりも30%大きく、前頭葉は1.5倍大きかった。複雑な思考を可能にする知性と圧倒的な記憶力を持っていたと推測されるボスコップ人だが、絶滅した理由としてその大きすぎる脳のせいで栄養不足に陥ったのではないかと考えられている。だが、もしボスコップ人が生き延びていれば文明の発達速度において現生人類は後塵を期し、われわれのほうが絶滅していたと専門家は語る。
【詳細】
母なる大自然、あるいはこの世の創造主は実は人間よりも先に高知能なヒューマノイドを誕生させていたのだろうか。しかし残念ながらその試みは“時期尚早”であったかもしれない――。
我々よりも高知能だったボスコップ人とは?
人間に似ているものの人間ではないヒューマノイドの化石やミイラが発見されることがあるが、その中には巨大な頭蓋骨を持つ古代の人骨であるボスコップ(Boskop)の遺骸がある。
1913年に南アフリカ共和国トランスバール州ポチェフストルーム地区ボスコップ村で頭骨化石が発掘され、それが後に「ボスコップ頭骨(Boskop skull)」と呼ばれ、自ずからその持ち主はボスコップ人(Boskop Man)であるとされた。
年代測定についてはあまりくわしく分析されていないようだが、スパンはきわめて広く30万年前から1万1700年前まで(中期石器時代および後期更新世)の間と考えられているようだ。
特筆すべきはその頭の大きさである。ボスコップ人の脳容積は現代人よりも30%大きい1900立方センチメートルにも達している。
南アフリカのポートエリザベス博物館館長で爬虫両生類学者のフレデリック・フィッツシモンズ(1870-1951)氏によれば、ボスコップ人は人類の先駆者であると考えられているクロマニヨン人であると同時に、絶滅した種族の1つに属していると言及している。
多くの科学者はボスコップ人が人間であると信じ、ボスコップ人の骨格の構造は、彼らが直立歩行していたことを示し、その顎の構造は話すことができたと示唆されている。
2009年にアメリカの有名な神経生理学者ゲイリー・リンチ氏とリチャード・グレンジャー氏によって『Big Brain: The Origins and Future of Human Intelligence(大きな脳: 人間の知性の起源と未来)』という著書が出版され再びボスコップ人が脚光を浴びることになった。
著者らは知能のレベルに正確に関与する脳の前頭葉が、ボスコップ人では非常に強く発達しており、それらは我々の脳の対応する部分よりも1.5倍大きいことを指摘している。
つまり著者らは、ボスコップ人はさまざまな情報の流れを並行して処理し、複雑な状況を分析し、さまざまな物事や出来事の間の目に見えないつながりを捉えることができ、おそらく彼らの記憶力は我々の記憶力よりはるかに優れていたと説明している。