そもそも「耳かき」の習慣がなかった欧米は、スマート耳かきのブルーオーシャンなのかもしれない。Future Market Insightsのレポートによると、耳掃除関連製品の世界市場は今後CAGR7.1%で成長し、2034年までに約36億9840万米ドルに達すると予想されている。

医学会からの警告届かず、TikTok動画などが人気を後押しか

2017年、アメリカ耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会が耳の健康に関する新ガイドラインを発表した。耳には自浄作用があるため耳垢の除去は不要という内容で、むしろ「外耳道を傷つける恐れがある」と強いトーンでの警告だった。

しかし、Bebird製品をはじめ2020年代初頭に消費者向けのスマート耳かきが登場。TikTokを中心とするSNSの耳掃除動画やテクノロジー面の魅力、入手しやすさなどが人気を後押しした。また、耳の衛生に関する理解不足も要因の一つに挙げられる。

Image Credits:Q-tips

商品名が「綿棒」の代名詞である「Q-tips」のパッケージには、「綿棒は耳の穴に入れないでください」と記載されているが、この警告を無視する消費者がほとんど(同社公式サイトでは耳掃除以外の使用例しか見当たらない)。綿棒の誤った使い方をすると耳垢塞栓などが発生するため、結局クリニックに駆け込んで医師による処置を求める人も多い。

上述の製品「BOCOOLIFE」は、「耳掃除のためだけに通院するのはスケジュール的にも経済的にも難しい」としたうえで、製品の有効性を訴求していた。しかし、医療の専門家らは当然ながらスマート耳かきの家庭での使用は非推奨。耳垢に関連する問題が生じた場合には専門家による処置が望ましいとしている。

そしてじつは、耳垢が乾燥タイプの人が多いアジア圏でも耳掃除は基本的に不要だ。それがわかっていたとしても、果たして耳かきを我慢できるかどうか……。

(文・Techable編集部)