問題は、その一触即発の危機がいつ、どこで、どういう形で発生するかですが、これにもいろいろなシナリオが考えられます。一番蓋然性が高いのがいわゆる台湾有事であることは衆目の一致するところでしょう。

頼清徳台湾総統

台湾では、5月の総統選挙で、独立志向が強い民進党の頼清徳政権が成立したので、中国側は当然警戒心を強めています。

当面台湾の出方を注視しているようですが、習近平政権はかねてから台湾解放のためには武力行使を厭わないとの強硬姿勢を明示しており、タイミングを狙っているはず。台湾海峡周辺での軍事演習やミサイル発射など示威行動を繰り返しているのもそのためです。最近では、我が国の領土である尖閣諸島の近海まで中国の軍艦や公船が頻繁に出没しており、いずれ偶発的な衝突事故が起こりかねない状況になっています。

そもそも中国は、なぜ衝突のリスクを冒してまで強引にこの海域でのプレゼンスを高めているのか。それは、当然、台湾解放に備えての計画的行動とみるべきですが、それだけが目的とは思えません。

沖縄と台湾がふたをしている

ここで、世界地図を上下逆にしてみるとよく分かります。中国大陸の鼻先に台湾と沖縄列島が覆いかぶさっている形で、中国海軍が太平洋に進出し、そこで制海権を確保するためには、わざわざ台湾の南まで迂回するか、さもなければ、どうしても台湾と沖縄列島の間の海域を通航する必要があります。台湾と沖縄列島の間に位置する尖閣諸島(中国名は釣魚島)の中国にとっての戦略的価値もまさにそこにあるのだと思います。

もう一つ台湾有事を考える場合に大事なことは、中国は、東アジア情勢だけではなく、ヨーロッパ、中東、アフリカなどの情勢も慎重に見計らって、ベストタイミングを狙っているということです。だから、それは東アジアの地域戦争に留まらず、必然的にグローバルな戦争、すなわち第3次世界大戦という形をとるであろうということです。ここから先はまた別の機会に論じてみたいと思います。