パリ五輪が開催されているこのひと時はマクロン大統領にとって日々の頭痛の種を少しでも忘れられる「夏休み」なのでしょう。毎年バカンスで訪れるブレガンソンで真の意味での夏休みを過ごしています。パリ五輪には閉幕式に戻ってくるほか、場合によりフランス選手激励のため、パリと行き来をする予定になっています。
そのマクロン氏、地中海に面したヴァール海岸で何を見つめるのでしょうか?国民議会(下院議会)の選挙を一か八かでやってみたものの宿敵極右のルペン氏を抑えることに成功したもののそのために工作した左派連合が議席数トップとなり、彼らの声を聞かざるを得なくなりました。一方、左派は「連合」であってその中身は寄せ集め。つまり、中道のマクロン氏の路線とは一線を画すものの中身はバラバラ。わかりやすい例えで言えば立憲と共産を足すとわかりにくくなるのと同じです。それこそマクロン氏が戦ってきた年金支給年齢引き上げにも左派連合の一派「不屈のフランス」政党はそれに猛反対をしています。
マクロン氏が選挙戦に打って出た理由の直接的引き金がEU議会の選挙で右派が大躍進したことで国内政治への動揺を抑えるためでありました。その点においては解散総選挙をした効果はあったのですが、毒を以て毒を制するはずが制するどころか、余計混乱をきたしてしまった、これが実態だろうと思います。
事実、いまだに首相が決められません。フランスでは大統領が首相を指名するので極端な話、マクロン氏が思う人を指名できるので、自身の所属する政権与党「ルネッサンス」から出すことも可能です。しかし当然ながらそうなれば第一党である左派連合からは大バッシングとなるのですが、その左派連合も寄せ集めで統一された思想があるわけではありません。正に戦国時代、何が何だかさっぱりわからないというのが正直なところであります。
マクロン氏の内憂外患とは自身の支持率が30%台で低迷し、国の結束力という点でばらけ気味であること、及びEUにおけるフランスの立場とフランスの財政赤字にどう対応するかであります。特に後者に関してはいまだ行方知らずのウクライナ問題、更にはEUの下半期議長がハンガリーのオルバン氏でありますが、EUの異端児でEU首脳の誰もがそっぽを向いている中、EUの盟主フランスが本来であればリーダーシップをとらねばならないところ、EU議会は右派、国内は左派で極めて難しいかじ取りが求められているのです。