ただ日米の高次の相互信頼を達成したオバマ大統領訪問に比して、その延長線上にあると言える2023年G7広島サミットは、いささか異なる意味を持った。岸田=松井=湯崎体制は、相変わらず盤石であった。

しかしG7広島サミットは、普遍主義を標榜するものというよりも、ロシアを非難し、ロシアに対抗するG7の結束、そしてG7の友好関係諸国の拡張を狙ったものだった。国際社会の「法の支配」を標榜しようとする努力はあったが、なぜそれが広島なのか、については、整理がなされないままだった。

インド、ブラジル、インドネシアなどの有力国が参加したが、岸田首相はそれらの諸国を「グローバル・サウス」といった十把一絡げの概念の中に入れ込んで扱っただけだった。岸田首相はむしろNATO加入を国是とするウクライナのゼレンスキー大統領に対して特別な歓待をした。

今回の広島平和記念式典におけるイスラエルに対する気遣いの仕方は、松井市長の広島市が、普遍主義的な平和主義を標榜する立場を減退させ、岸田首相が率いる日本政府の下部機関であるかのような性格を強めてきた経緯の結果であると言える。