「要は章男さんと国交省のケンカ」

 トヨタ以外にもマツダ、ホンダ、ヤマハ発動機、スズキでも認証不正が明らかになったが、是正命令を受けたのはトヨタのみだ。背景には国交省の“トヨタ憎し”の姿勢があるとの指摘も聞かれる。認証不正の発覚を受けてトヨタの豊田章男会長は6月3日に会見で、現在の日本の認証制度について「ギャップはあると思う。これをきっかけに国とOEM(=自動車メーカー)がすり合わせをして、制度自体をどうするかという議論になっていくとよいと思う」と発言。国の認証制度に改善の必要があるとの認識を示していた。

 このほか、後面衝突試験で1100キロの台車を衝突させるルールのところトヨタは1800キロの台車を使っていた点について、豊田会長は北米基準では1800キロを使うことになっており、より厳しい条件の試験をしていたと説明。これに対し国交省は、北米基準は06年に廃止されていると説明している。

「先日、豊田会長がトヨタの海外移転を示唆する発言をして注目されたが、社員からは『要は章男さんと国交省のケンカ』という声も聞かれるほど、今、国交省とトヨタの関係は悪い。国交省の特に上層部は、トヨタは不正をしておいて認証制度のほうに問題があるかのような言動をしてけしからんとして、態度を硬化させているようだ。なんとかトヨタに謝らせようとしているという空気すら伝わってくるが、なぜそこまでトヨタを敵視しているのか、いまいちよくわからない。

 現在の国の認証制度に時代に合わない点や不明確なルールが存在することは以前から指摘されており、その問題に手をつけないまま“ルールに違反しているから不正だ”と自動車メーカーを取り締まる一方の国交省に対し、自動車業界内には批判的な声もある。国内自動車業界トップでもあるトヨタの豊田会長としては、今回の件を契機に国と業界が協力して前向きに制度を見直していきましょうと呼び掛けるのは、至極当然のことだ。それに対し国交省は単に反発することしかできないのなら、能がないとしかいいようがない」(全国紙記者)