渋谷のオフィス街化
こうした変化は、代官山の隣の渋谷にも大きな影響を与えている。
「渋谷には東急百貨店、109、 西武百貨店にマルイがあって、さらに個人店もたくさんあるという、非常に洗練されたショッピングの街というイメージがあったんですけど、大規模な再開発を進めた結果、今や駅前を含めて完全なオフィス街になっています。もはや渋谷で買い物をするという感覚がなくなり、デパートなら副都心線で新宿三丁目の伊勢丹に行く、という人が多いですね」(同)
この渋谷のオフィス街化が、近隣に位置し、閑静な代官山の「ベッドタウン化」を進める結果となっている。
「渋谷へひと駅という立地、さらに周辺の静かで文化的な環境を含めて、居住地としての評価は高いです。現在の代官山付近の中古マンション価格は、坪600万円台から800万円台くらいを維持しています。それが街にとっていいか悪いかは別として、代官山はショッピング街ではなく、渋谷で働く人たちの居住エリア、後背地としての存在価値を保ち続けるというストーリーは容易に想像できますね」(同氏)
2000年8月、代官山駅前にかつて存在した同潤会アパートの跡地に、大型複合施設「代官山アドレス」が開業した。その中心には36階建ての高層マンションが建設されており、居住エリアとしての代官山が注目されるきっかけとなった。
「代官山の地価は、副都心線が乗り入れした10年前の2013年で坪あたり500万円ぐらい。そこからさらに高騰して、今年の公示価格は坪当たり890万ぐらいになっています。この価格で土地を買って、箱物を建てて採算を合わせようとすると、賃料をすごく高く設定する必要がある。周辺の賃貸住宅の家賃をみると、若い方が住むような1Kとか1DKの物件でも、月額賃料は30万円を超えています。店舗のテナント料も同様で、よっぽど売り上げをキープしないと営業を続けられません。代官山の立地と、オシャレで高級なイメージが地価の高騰を招き、その雰囲気を作り上げていたセレクトショップやカフェが持ちこたえられなくて潰れてしまうという、皮肉な結果になってしまったんです」(同)
一方、代官山を新たな住宅街として捉える開発も進んでいる。
「今年10月には代官山通りと八幡通りの交差点に東急不動産が中心となって『フォレストゲート代官山』という賃貸レジデンスと商業を組み合わせた施設がオープンしますが、コンセプトはサーキュラーエコノミー活動を行う事業者と組んだサステナブルな生活の提供というものです。新しい代官山の姿を体現できるか注目です」
1970年代くらいまでは、閑静な住宅地だったという代官山。おしゃれなショッピングタウンというイメージを持つ世代にとっては、最近の状況は「衰退」に思えるが、落ち着いた居住エリアとして「回帰」しているだけなのかもしれない。
(文=清談社、協力=牧野知弘/オラガ総研代表)
提供元・Business Journal
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?