では、台湾問題はどうなるのでしょうか?今、北戴河会議が開催されいます。何が議論されているかわかりませんが、基本は人事問題が多いとされます。このところ、高官の人事案件が続いたこともあり、台湾問題まで議論されるのか疑問で、個人的には真剣な議論はないだろうとみています。理由は中国は必ずしも台湾を香港のように実効支配することが最終手段ではなく、台湾民が中国の方を向けばそれでよいのです。よって24年1月の台湾総統選が終わるまでは強い影響力を放ちつつも特段表面的な動きには出ないとみています。日欧米の高官や政治家が台湾に行くことは中国政府にしてみれば「本社の意向に逆らって支店に行くな」というようなものでしょう。
一方、最近急速に着目されているのが沖縄問題。習近平氏が発言したこと、沖縄知事が中国を訪問したこと、中国で沖縄と中国の歴史が頻繁に報じられていることで強い関心が生まれてしまいました。個人的には沖縄知事の訪中がうまく利用されたとみています。
基本的にこの言論戦で何かすぐ動くことはないと思いますが、中国内で沖縄の歴史がどういう形にしろ理解が広まった時点で民が「琉球は中国のものだ」と言い放つことが容易になります。私が冒頭指摘した華僑や海外に移住した中国人のボイスの影響力が大変だと申し上げたのは、思想教育をされるとそれに対する反論や異論を一切受け入れず、「そうなんだ!」と思い込んでしまう点なのです。同様なのが韓国の慰安婦像問題です。
よって中国の琉球報道は極めて憂慮すべき事態と申し上げておきます。そして中国の膨張主義は思想的膨張が主軸ではないかと考えています。日本の右派の言論は領土問題に囚われていますが、実際には違うアプローチではないかと考えています。今般、公明党の山口代表が訪中するにおいて岸田首相が「親書」を託す予定です。親書の意味合いを考えると敵対心を煽るクレームレターにはならないわけで日中間の思想の駆け引きが今後どう展開されるのでしょうか?
海外で活動や経験をしている者としての一意見であります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月10日の記事より転載させていただきました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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