自民党全敗の原因は「政治とカネの逆風が直撃」(日経)、「裏金が自民に逆風」(読売)、「裏金対応で信を得られず」(朝日)と、メディアは分析しています。それは表面的な話で、問題の根はもっと深いところにある。

法律に触れる「裏金」そのものより、裏金を使ってどのような政治をしてきたか。今後、自民党はどのような政界構造に変えていくつもりなのか。そのことに有権者は不信の目を向けたのです。

注目度の高かった東京15区で当選した酒井菜摘さんは「野党第一党として責任を持ってまっとうな政治を実現していく」、「利権やおカネでなく、国民の声を受けて動くという訴えに理解をいただいた」と、喜びの声を語りました。掘り下げ方が全く足りません。

「まっとうな政治で何を実現していくのか」、「国民の声を受けてどう動くのか」を語らなければなりません。政治の初歩的条件を述べたのにすぎません。中身がないのです。それは与党も同じです。

「ポスト岸田」に向けて動きが活発になると、メディアは言います。そうなんでしょう。例えば、「小石河連合」(小泉、石破、河野氏)が党内支持を拡大する可能性がある(読売)そうです。

では、かれらはどういう政治政策思想を持ち、どのような政治をするのかに触れていない。「小石河連合」に限らず、自民党が総裁候補を決めるにあたり、「誰と誰の関係がいい」、「誰と誰の関係が悪い」という視点から、多数派工作がなされる。政策思想、政策ビジョンは後づけです。

「メディアの解説も人間関係で次を予想するだけで、政策やビジョンの中身に踏み込んでいない」と、北岡伸一・東大名誉教授は指摘してます。

政治資金規正法を改正して、カネの流れを透明にし、きちんとチェックし公表する流れです。議員は資金報告書を自ら点検し、「確認書」に署名する。それは政治をするにあたっての基礎的な条件に過ぎません。

カネを正しく使ってどのような政界構造に変えるのか。その議論がないまま、裏金疑惑に幕引きがなされるようでは、自民党体制に対する失望は続くでしょう。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年4月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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