生き方が複雑になりすぎて息苦しさを感じる
社会情勢に人生を左右された現在の若者に向けて、石渡氏は次のようにアドバイスする。
「昔に比べて、コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスを求める学生が非常に増えたんです。私が長年、取材を続けているとある大学のゼミナールがあるのですが、そちらの大学教員の方が語るに『やたらと答えを求める学生が増えた。例年一定数は存在したものの、コロナ禍以降、特に増加している印象』とのこと。また『前年のゼミ発表の成功事例を表面上マネしているだけで、内容が伴っておらず評価しにくい』という感想も抱いていました。
この事例から推測するに、うまくいった成功事例があればそれに倣い、楽に成果を出したいと考える割合が高くなったのではないでしょうか。ネットメディア、ブログ、SNSが発達した現在では、研究テーマは入手しやすくなりましたが、同時に検索してヒットする事例や情報も格段に増えました。ですから今の若者はどれを参考にすれば良いのかわからなかったり、調べた内容が複雑でまとめるのが面倒だという理由により、研究のゴールが定まらず、うまくいった先行事例を模倣してしまうのかもしれません。
しかし、中身がおざなりになってしまい、端から見たら評価しにくくなっている、というワケです。個人的に、今の若者は複数の資料から議論を組み立てるための想像力が下がったという見方もできます。
働き方や生き方に多様性が生まれたことも関係してくるでしょう。いわゆる、人生のロールモデルがなくなったということです。1990年代までは偏差値の高い大学に入学し、良い企業に就職、結婚して子どもをつくることが一般的な大学卒の幸せのあり方でした。しかし、2000年代以降、大企業で不祥事が起きたり、ベンチャー企業が大当たりして事業拡大したり、オワコン扱いされていた企業が回復したりと、『このルートに入れば安心』というモデルはなくなり、幸せのあり方は画一的なものではなくなりました。そのため学生たちは『どのルートのコスパが良いのか』と“答え”を求めて焦るわけです。
就活市場は、今や早期に始める学生と遅れて始める学生に分かれる2極化を通り越し、就活のモチベーションが高い層のほうが少ないピラミッド構造になっています。就職情報会社の調査では、インターンシップ参加率は上がっており、就活は活発化していると発表していますが、就活情報サイトに登録する学生はモチベーションが高くて当たり前だと考えられます。そうではないモチベーションの低い学生、セルフ氷河期の学生の実数を考えると、その数は全体の20~30%にも上るのではないかと考えられますね」(同)
学生を襲う無気力の正体は、変動する社会情勢、コスパ思考など今の若者を取り巻く環境、思考が複雑に入り混じり出来上がったものなのかもしれない。
(取材・文=文月/A4studio、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)
提供元・Business Journal
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?