朝鮮中央通信(KCNA)によると、北朝鮮の金正恩総書記の実妹、金与正労働党副部長が2月15日、「個人的見解」と断りながら、「岸田文雄首相と金正恩総書記との首脳会談を開催することも可能だ」といった趣旨の談話を発表した。その突然の岸田首相への訪朝の招きは、韓国がキューバとの国交樹立を発表した2月14日の1日後だ。
もちろん、金与正氏の岸田首相への訪朝の招きにはそれなりの根拠はある。岸田首相は2月9日、衆院予算委員会で停滞する北朝鮮との外交を打破する意味もあってか、金正恩総書記との首脳会談を開く意欲があることを示唆していた。その発言への返事として、金与正氏は「岸田首相の訪朝も」といった内容の談話を発表したと受け取ることもできるからだ。
韓国情報筋は、「わが国とキューバとの国交樹立というニュースに大慌てした北朝鮮側は韓国側への対抗という意味合いから、岸田首相の訪朝というカードを急遽切った」と述べ、北側が周到な準備の末、日本との国交回復という大きな外交的課題に取り組んでいくという真剣なものではないという。
韓国情報筋はまた、今年11月に実施される米大統領選について、金正恩総書記はトランプ前大統領のカムバックを想定し、米朝関係の見直しに入っているという。具体的には、トランプ氏との米朝首脳会談のやり直しだ。北側にとって非核化交渉はもはやテーマではない。北側は今日、核保有国のステイタスの獲得を狙っている。そこで次期米大統領との交渉では、核開発の規模の縮小とテンポを抑えるというオファーを米国側に出し、譲歩を獲得しようとするだろうと見ている。
北朝鮮の最大の外交課題は、米国との関係改善、対北制裁の解除だ。その意味で、金正恩氏は2019年、トランプ前大統領と首脳会談を通じて米朝関係の改善を図ったが、その外交は成果なく終わった。金正恩氏にとって米朝交渉の失敗は大きな痛みとなった。金正恩氏はトランプ氏との第2ラウンドを夢想し、その対策を今から練っているのかもしれない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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