国際原子力機関(IAEA)も海洋放出にはお墨付きを与えている。IAEAのレビューチームは世界11か国の専門家から構成されており、2年にわたり何度も訪日し、6つの報告書を発表するなど、丁寧にレビューを実施した。海洋放出の環境への影響は無視でき、国際的な基準に合致している、と最終的な報告書で述べている。

しかし、放出が始まった8月24日、中国政府は、日本産水産物の輸入を全面的に停止すると発表した。香港も中国に追随して、福島など10都県産の水産物の禁輸を決めている。2022年の水産物輸出額は、前年比3割増の3873億円で、中国は871億円、香港は755億円。水産物輸出総額に占める中国の比率は22.5%、香港は19.5%、合計で42.0%にも達する。影響は甚大である。

一方、中国は、2020年に浙江省・秦山第三原子力発電所で約143兆ベクレルのトリチウムを放出している。2021年の放出量は、広東省・陽江原子力発電所で約112兆ベクレル、福建省・寧徳原子力発電所で約102兆ベクレル、遼寧省・紅沿河原発は約90兆ベクレルに上る。福島第一原子力発電所の年間放出総量は22兆ベクレル未満に抑える計画である。これらの事実からみても、科学的議論だけで簡単に解決する問題でないことが分かる。

私たちがまずできることは、国内での風評被害を広げないことである。そして、科学的で透明性のある情報を国際社会に広く発信し続けることが、大切である。

注1)処理水ポータルサイト 注2)包括的海域モニタリング閲覧システム(ORBS) 注3)処理水ポータルサイト、海洋生物飼育試験

編集部より:この記事は国際環境経済研究所 2023年10月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は国際環境経済研究所公式ページをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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