中国の不動産問題の始まりは2020年ごろで、恒大集団がヤバいと言われてから既に3年以上の月日が経っています。今回、香港高裁で法的整理命令が出ていますが、知る人が見れば「あっ、そう」以上の何物でもありません。既に恒大の上場子会社の株式の取引は再開されているし、恒大の取引再開もさほど遠くないうちに始まると思います。「え、潰れたんだろう、何言ってんの?」と言われると思います。潰れて上場廃止になるのは西側ルール、香港市場は営業していれば上場を維持し売買することは継続されます。つまり投資家は保護されています。
では香港高裁が出した命令は何か、といえば西側の訴状に「そうですね、法的整理ですね」と裁判所が認めた、それだけです。但し、恒大の90%の資産は中国本土にあるのです。中国共産党が西側ルールに基づいて恒大の持つ資産を清算し、なにがしかのお金を西側投資家に返すという発想はばかげています。習近平氏にとって中国国内の資産をなぜ、西側に売り渡すようなことをすると思いますか?ありえないのです。
では中国共産党はどうするつもりでしょうか?私は以前、不動産事業はバラバラにできるので、それを個別管理して再生させるのがベストと申し上げました。同様の再生プログラムは既にあの海航集団で行っています。同グループは中国がバブルに浮かれていた頃、もっとも華やかな海外投資をしていてた企業の一つでピークにはヒルトンホテルの25%とかドイツ銀行の10%の所有権を持ち、海外不動産も次々買い漁っていました。が、資金繰りが悪化したところで創業者がフランスで「事故死」、一気に実質国有化となり、今でもちゃんと事業をしているのです。
では恒大再生プランですが、個別の不動産を査定したうえで妥当な市場価格で地方政府、たぶん融資平台が物件を買い取り、それを一般向けに分譲ではなくリースないし賃貸します。できれば「rent to own」 という長年賃料を払った人は一定期間後、所有できるようにするのです。これにより分譲住宅を買えない層の中国人マーケットにリーチし、市場の活性化をさせるのです。
こういった工夫あるスキームを直ちに組めば5年程度で手持ち物件は全部処理できるでしょう。他の不動産会社でもそうすればよいはずです。要は知恵なのです。不動産は分譲と賃貸しかいないと思ってしまうのですが、手法はいろいろあるのです。私が「Lease to own」という手法の物件をやっているのもその実験プログラムなのです。中国は人口が減っていると言ってもまだ14億人いるし、ほとんどの人はボロ屋に住んでいるのです。共産主義、共同富裕なのですから、生活レベルをアップさせるという意味からも余っている住宅の活用で中国の不動産事業に光を与えることは可能なはずです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月31日の記事より転載させていただきました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?