恐らくそういうことなのでしょう。それにもかかわらず、財務相らが「断固たる措置をとる」と連呼してきたのは、「無策ではないぞ」という構えを見せることは必要だと判断してきたからでしょう。

19日には消費者物価が2.6%上昇し、23年度平均では2.8%の上昇と発表されました。アベノミクスの目標であった「2%の物価上昇」を2年連続で超えいます。日銀が想定を繰り上げて、金利引き上げに動くかもしれません。その気配からか、株価は19日午前、1000円安で3万7000円を割った。日銀が利上げに動くのかもしれません。

今後、日銀が短期金利(現在0.1%)を上げるとしても、0.25%を4回、続けてもやっと1%です。日米間の金利格差(4、5%程度=ドル高・円安要因)が大幅に縮小することはありません。日本の利上げと介入が重なったとしても、円安は続く。

いろいろな動きが交錯するとしても、政府の本音は「円安は円高より居心地がいい」に変わりがないと思います。まず、物価高の下では消費税収入が増える。24年度政府予算案では、主な税収は消費税23.8兆円です。これが増えていくなら、財務省は円安歓迎なのです。

さらに所得税17.9兆円、法人税17.4兆円です。輸出依存度が高い大企業ほど、利益が増え、法人税収も増える(16.3%増)。15.9%減となった所得税は「物価高を相殺できる賃上げを」が叫ばれていますから、今後、増えるでしょう。財政赤字に悩む財務省はこの面でも円安歓迎です。

「行き過ぎた投機的動き」と政府はいいます。「投機的動き」を誘っているのは日本の超低金利です。日本で資金を借りて海外で運用すれば、金利差を稼げる。日本株も買う。

金融を正常化しようとすれば、財政の正常化と連動する必要があります。日本が金利を上げても、せいぜい1%程度の水準までとすれば、円安が続く。目先の困難ばかりに振り回されず、「緩和依存症」からの脱却に向け、長期的展望にたって、プログラムを書き直すべきでしょう。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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