パーサヴィアランスは、現在では乾燥しているネレトバ渓谷の北側の辺りで、岩石に穴を空けて試料を採取しました。

研究チームはこの辺りの岩石を「チェヤバ・フォールズ(Cheyava Falls)」と名付けています。

そして採取した試料を探査車に搭載されている機器で分析した結果、生命の痕跡を示唆する化学物質が発見されたのです。

火星には微生物が生きていたのか?

パーサヴィアランスが探査した「チェヤバ・フォールズ」の岩石には、白色をした硫酸カルシウムの鉱脈が走っています。

研究者によると、これは「火星にかつて水が流れていたことを示す証拠だ」といいます。

その一方で、白い鉱脈の間には赤茶色の岩石が広がっており、そこには不規則な形をしたオフホワイトの斑点がいくつも点在していました。

さらにそれらの斑点はヒョウの模様のように周りが黒い物質で縁取られていたといいます(下図を参照)。

白い鉱脈の間に赤茶色の岩石がある、その上にはヒョウ柄のような斑点が見られる
白い鉱脈の間に赤茶色の岩石がある、その上にはヒョウ柄のような斑点が見られる / Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS

チームはこれらの斑点をパーサヴィアランスに搭載されている「X線岩石化学用惑星計器(PIXL)」にかけて、どんな化学物質を含んでいるかを調査。

その結果、鉄とリン酸塩の他に炭素ベースの分子といった有機化合物が含まれていたことがわかったのです。

パーサヴィアランスの科学調査に参加している豪クイーンズランド工科大学(QUT)のデヴィッド・フラナリー(David Flannery)氏は「これらの発見にはとても驚かされました」と話します。

というのも「地球上の岩石だと、これと同じ化学物質の特徴は地表面下に生息していた微生物の痕跡とみなすことができるからだ」と説明します。

つまり、火星にまだ水が溢れていた数十億年前には、何らかの微生物が水中や湿った土壌の中に存在していた可能性があるのです。

火星に生命体はいたのか?
火星に生命体はいたのか? / Credit: canva