チャーハン症候群には2タイプある

セレウス菌の毒素によって生じる食中毒には、2つのタイプがあります。

1つは腹痛や水様性下痢を主とする「下痢型」で、もう1つは吐き気や嘔吐を主とする「嘔吐型」です。

それぞれの潜伏期間は、下痢型が6〜15時間で、嘔吐型は短く30分〜6時間(平均3時間)となっています。

セレウス菌の毒素による症状は、小さな子供や基礎疾患のある大人の場合は、病院で治療を受けなければならないほど悪化する場合もありますが、一般的には数日ほどで回復します。

そのため、たいていの人は自力治癒するため、病院で診察を受けないケースが多く、チャーハン症候群の正確な発生件数はよく分かっていません。

日本でもセレウス菌を原因とする食中毒の発生件数はそれほど多くなく、年々減少する傾向にあります。

厚生労働省の調べでは、年間で100〜400名ほどの患者数しか見られないとのこと。

日本での「セレウス菌食中毒」の発生件数
Credit: 東京顕微鏡院 – 加熱しても死なない食中毒菌 1.セレウス菌による食中毒(2016)

しかし最初に話題に出たような死亡例は日本国内でも発生しており、平成20年に家庭内で起きたセレウス菌食中毒(原因食品は焼飯)で3名中1名が亡くなっています。

また季節としてはやはり気温の高い6月〜10月に多発しやすいようですが、冬場でも十分に起こり得るようです。

セレウス菌から身を守るには?

最もシンプルな方法は、一度で食べ切れる分だけの料理を作り、調理後はなるべく早めに食べ切ることです。

それでも食品が余る場合や作り置きをする場合は、粗熱を取って容器やジップロックに小分けし、すみやかに冷蔵庫なり冷凍庫へ保存しましょう。

専門家によれば、室温で6時間以上放置された食品は、セレウス菌の毒素が危険域にまで増殖している可能性が高いとのこと。

ですから、昼間に作って夕方以降まで放置したものは、ほぼアウトと見るべきでしょう。

また「小分け」も大事なポイントです。多めに調理した料理を一つの容器に入れて冷蔵すると、中心部まで冷えるのに時間がかかり、その間に毒素が増えてしまう恐れがあるため、なるべく料理を小分けにして平たく容器に収めて冷蔵庫に入れるのがポイントです。

この手順で冷蔵した食品は、再加熱しても安全に食べられます。

ただし一般的な目安として、冷蔵庫から出して再加熱したものは2時間以内に食べ切り、もし4時間経っても残っていれば捨てた方がいいようです。

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Credit: canva

ちなみにですが、セレウス菌と同様に、加熱に対して非常に強い細菌に「ウェルシュ菌」があります。

ウェルシュ菌も自然環境や人、動物の腸内にありふれた細菌ですが、これもセレウス菌と同じく、芽胞を作り出して毒素を分泌します。

身近な食材としては牛肉・鶏肉・魚に保菌されていることが多いため、それらを使った煮込み料理(カレー・シチュー・スープ)は常温放置すると食中毒にかかる危険性が非常に高いです。

さきほど話した通り、大きな鍋で大量に作った料理のほうが中心部まで冷えるのに時間がかかるため、菌の影響を受けることが多くなります。

アメリカはカレーを家庭で作る人が少ないと言われるため、カレーを大量に作って何日も掛けて食べる人が多い日本では、ウェルシュ菌の方が被害に合う人が多いかもしれません。

室内に長時間放置してしまったものは、もったいないと感じても口にしない方が得策でしょう。

参考文献
What is ‘fried rice syndrome’? A microbiologist explains this type of food poisoning – and how to avoid it
加熱しても死なない食中毒菌 1.セレウス菌による食中毒(東京顕微鏡院)