ロシアが今年4月1日、国連機関の最高意思決定機関ともいえる安全保障理事会の議長国に就任した(安全保障理事会の議長国は15カ国メンバーの輪番制で、アルファベット順に毎月交代する)。戦争犯罪を繰り返すロシアが国連の檜舞台で安保理議長国に就任すること自体、現行の国連が置かれている状況を端的に示している(「露の安保理議長国就任は『冗談』か」2023年4月5日参考)。
ウクライナの国連常駐代表、セルギー・キスリツァ氏は、「4月1日は、不条理のレベルを新たなレベルに引き上げた。安保理は現在の形では麻痺しており、安保理の重要な問題、紛争防止と紛争管理に対処することができない」と述べている(ちなみに、ジュネーブに本部を置く国連人権理事会で今年10月10日、理事国の選出の投票が行われたが、ウクライナ侵攻が理由で理事国から追放されていたロシアは理事国復帰を目指したが落選した)。
参考までに、イスラエルを無条件に支援すると表明してきたドイツが国連総会では反対票ではなく、棄権したことに対し、駐ドイツ・イスラエル大使のロン・プロサー氏は、「国連におけるドイツの支援が必要だ。ハマスには残酷な虐殺の責任があると直接言及していないという理由で棄権票を投じるだけでは十分ではない」と述べ、ドイツに対し失望を吐露している。
国連から脱退したとしても、世界の紛争が解決できるわけではない。193カ国の国、機関が所属している国際機関は現在は国連しかない。加盟国が増えれば様々な世界観、価値観、政治体制の国の間で解決策を見出すことは更に難しくなる。新たな国連機関の設置をも含め、世界は知恵を集めて国連の抜本的な改革に乗り出すべきだ。チェコ国防相の国連脱退を呼び掛ける発言は国連の在り方を考えるうえで一石を投じたことは間違いない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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