国連総会で27日、イスラエルとイスラム過激テロ組織「ハマス」の戦闘が続くパレスチナ自治区ガザを巡る緊急特別会合が開かれ、ヨルダンが提出した「敵対的な行為の停止につながる人道的休戦」を求める決議案が賛成多数で採決された(賛成120、棄権45、反対14)。
ヨルダンが提出した同決議案ではイスラエルとパレスチナの民間人に対するあらゆる暴力を非難し、「不法拘束」されている全ての民間人の即時無条件解放を求め、ガザ地区への人道支援への無制限のアクセスを要求している。また、「敵対行為の停止」につながる「即時恒久的かつ持続可能な人道的停戦」を求めている。
ただし、1300人以上のイスラエル人が犠牲となったハマスの奇襲テロに対する非難もなく、イスラエルの自衛権についても何も言及されていないことから、米国、イスラエルなど14カ国が決議案に反対票を投じたことは前日のコラムでも報告した。
イスラエルのギラッド・エルダン国連大使は、「採択された文書ではイスラエルをテロ襲撃したハマスの名前は言及されず、ただ、10月7日以後のイスラエル軍の報復攻撃の激化に対する懸念だけが表明されている」として、「国連にとって今日は暗い日だ。不名誉な日として歴史に記録されるだろう」と述べた。
それだけではない。反対票を投じたチェコのヤナ・チェルノホワ国防相(Jana Černochova)は28日、自身のX(旧ツイッター)の中で、「ハマスの前例のないテロ攻撃に明確かつ明白に反対したのは、わが国を含めてわずか14カ国だけだ。私は国連を恥じる」と述べ、「わが国はテロリストのファンの集まりである国連から立ち去ろう」と呼び掛けたのだ。
イスラエルのエルダン国連大使の批判は紛争当事国として理解できるが、東欧のチェコがパレスチナ紛争での国連機関の無能さに激怒し、国連からの脱退を要求したのだ。
国連の紛争解決能力についてはこれまでも何度も批判する声があがってきた。その意味で、国連批判は珍しいことではない。193カ国から構成される現行の国連は人道支援などではその役割を果たせるが、残念ながら紛争解決では無能だ。
ロシア軍がウクライナに侵攻し、民間施設を砲撃し、ダムを破壊するなど多くの戦争犯罪を行ってきたが、国連安保理事会はその度に招集されても、ロシア非難決議案が採択されたことがない。理由は明らかだ。安保理で拒否権を持つ5カ国の1国に、戦争犯罪を繰り返し、多数のウクライナの民間人を殺害してきた紛争当事国ロシアが入っているからだ。米英仏などの常任理事国がロシア非難決議案を提出しても拒否権を有する常任理事国ポストにロシアとその同盟国の中国が座っている限り、採択される可能性は限りなくゼロだ。