日本ではトヨタの車を買う以上、ディーラーもトヨタの看板を背負っているぐらい一生懸命に営業しますが、こちらではなかなか悩ましいわけです。車が手に入る、入らないはディーラーと客がどれだけ密接な関係を築くか次第。それこそ飯を食わせ、小遣いをやるぐらいでない買えないぞ、という風にも聞こえるのです。不動産ではよく差別的販売があるのですが、一般大衆向けに販売するトヨタではイメージは崩れてしまいますよね。

私がトヨタが守勢と感じたのは販売台数が好調で殿様商売となり、ひたむきさが欠けてきているように感じるからでしょうか?海外販売が好調なだけに日本市場だけを見ていてはいけないのかもしれません。

ところで豊田章男氏が再び弱気発言をしています。同社の社内向けの「トヨタイズム」の動画で株主総会での自身の信任率が71.93%に下がっていることに「このペースでいくと来年は取締役としてはいられなくなる」「この1年の私の振る舞いで要は半分の方がもう辞めてくださいよといっているということだ」などと述べているようです。豊田氏の分析では個人株主は豊田氏に賛同するも機関投資家に厳しい姿勢があるとしています。

直近の認証不正問題を指しているのだと思いますが、私にはそれはトリガーでしかなかったと思っています。海外勢の一部の投資家は豊田氏の経営手腕が好きではないように見えるのです。理由はEVなど時流に乗らず、我が道を行くスタイルに「協調性が見えない」という欧米ならではの我儘な言い分ではないかと察しています。非常に下品な言い方をすればトヨタは西側諸国側の代表的自動車メーカーとして他の自動車メーカーと歩調を合わせろと強要しているようにも映るのです。

事実EVについては現在市場に逆風が吹いているのでHVが得意なトヨタが俄然有利な状況にあります。北米自動車メーカーの決算もテスラ、フォードなど散々であり、強すぎるトヨタへの嫉妬にも感じるのです。一方株主としての信任投票ですから欧米になびかないトヨタに業を煮やすということではないかともいえます。

仮に豊田氏が取締役で無くなれば欧米機関投資家にとってトヨタは扱いやすい会社になります。その点においても創業家でクルマ好きでプロの中のプロとして一過言持つ豊田氏が目の上のたんこぶということでしょう。

また同業他社も挽回を狙います。ホンダ、日産陣営に三菱が加わると報じられています。台数的にはその3社を合わせてもまだトヨタ1社にかなわないのですが、市場は激変期にあることとユニークさを求める時代になっていることを考えればトヨタと豊田氏が守勢をどう挽回するのか、私としては期待したいところです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月31日の記事より転載させていただきました。