もしそうでなければ、西アフリカサヘル地域でアル・カイダ系の勢力としのぎを削るイスラム国(IS)系の勢力とつながっているという想定も出てくる。IS系の勢力が、モスクワなどロシア国内で頻繁にテロ攻撃を行っている状況との関連性は、かねてより疑念がささやかれていたところだ。

ウクライナGURは、スーダンなど他のアフリカ地域においても、ワグネル戦闘員に対する攻撃を行ってきていると、従来から指摘されてきていた。

ウクライナにとっては、敵の敵は味方、アフリカの天然資源がロシアの資金源として活用されるのを防ぐ、といった発想方法があるのだろう。だがサヘル地域各国で、旧宗主国のフランス軍が次々と追い出され、ニジェールに置かれていたアメリカの軍事拠点も追い出されたのは、テロ組織掃討作戦に成果が見られないことが主な理由である。ウクライナが、マリでテロ組織系の反政府勢力を公然と軍事的に支援するという状況は、アフリカ人には受け入れられないはずだ。

欧米諸国もウクライナの動きを熟知しているようには見えない。日本では、政府も研究者もジャーナリストも軍事評論家も、ウクライナの評判が下がることについては、従来の見ざる言わざる聞かざるの政策を取り続けるだけだろうが、欧米諸国にとっては、米国大統領選挙も佳境に入った時期での複雑な事態の展開だ。

ヨーロッパとアフリカの戦争が結びつき、今後の国際政治情勢にさらなる暗雲をもたらす事情を示す動きだと言える。