マリ北部で、軍事中央政権を支援してアル・カイダ系勢力のJNIMと戦っていたロシアの民間軍事会社ワグネルグループの戦闘員50~80人が戦死したというニュースが出た。

注目すべきは、戦果につられたのか、ウクライナ国防省情報総局(GUR)報道官が「マリ反政府勢力に必要な情報を与え、ロシアの戦犯を相手に成功的に軍事作戦を遂行した」と明らかにしたことである。『キーウポスト』が、マリ反政府勢力がウクライナ国旗を持って立っている写真も公開した。

Kyiv Postより

ウクライナのアフリカでの反ロシア活動は、かねてより様々な局面で指摘されてきたが、GURが自ら堂々と認めるのは、異例である。華々しい戦果が出たところで、存在を誇示したくなったということか。

マリでは、2012年から内戦が続いている。当初は北部トゥアレグ人たちの独立運動が発端だったが、すぐにアル・カイダ系のイスラム過激派組織が勢力を伸ばし、中央政権と長期に渡る戦争を遂行している。治安の改善が果たされないため、2020年に成立した軍事政権は、国連PKOやフランス軍の撤退を求め、代わりにロシアの軍事作戦を歓迎していた。

一部報道では、GURはトゥアレグ人系のAzawad勢力を支援したということだが、Azawadは過去10年ほどの間、アル・カイダ系のJINIM系の諸勢力に押されて、ほとんど活動できていなかったはずである。ワグネルとの大規模な衝突を前提とする軍事作戦を遂行する能力を持っていたとは想像しにくい。GURがJNIMを支援したと考えるほうが、自然である。