1976年の宮沢外相は、武器輸出を汚れ仕事だと表現していました。その時期と比べると隔世の感があります。

しかし、日本の安全保障を考えると、今回の防衛省の発表に不安を覚えざるを得ません。

米国がウクライナ支援にかかりっきりになっているせいで、台湾へ供与する兵器の生産が追い付いていません。台湾に兵器が渡らなければ、軍事的威圧を強める中国に対抗することが難しくなりません。この事態に「台湾有事が日本有事」だと考える人たちは懸念を覚える必要があります。

2024年4月末現在、米国の台湾向け武器供給の遅れは約197億ドルに上る。この大幅な遅れは台湾の防衛力を弱体化させ、現在の武器供給プロセスの非効率性を浮き彫りにする。

また、日本はたださえ自国の兵器の備蓄が足りないのにも関わらず、米国に兵器を売却する余裕はあるのでしょうか?大量の中距離ミサイルを保有している中国とのミサイルギャップが拡大していく一方です。

岸田首相はアジアが明日のウクライナになる可能性があると言いませんでしたか? ではなぜ日本は世界最大のミサイル保有量を持つ中国を前に、絶対に必要な防空体制を放棄するのでしょうか? これは東京(そしてワシントン)による極めて誤った決定である。

日本がウクライナ支援を継続することによって、欧州諸国が中国への警戒感を高めることにつながれば良いのですが、その気配が見られません。

ウクライナ戦争勃発から2年以上が経過した今、ウクライナ支援が具体的にどのようにして「日本のため」になっているのかを検証する時期に入っているのではないでしょうか?

ウクライナを支援し、ロシアの侵攻を止めることが、台湾を侵攻するという中国の意欲を削ぐことにつながるという議論もあります。しかし、西側諸国がウクライナ支援にコミットしている間、中国は台湾への軍事的、政治的圧力を一段と強めているようにも見えます。

アメリカではヴァンス副大統領候補のように、ウクライナ支援の在り方に根本的な疑問を突き付けている政治家がいますが、日本では皆無です。

戦場で膠着状態が続き、戦力を著しく消耗しているウクライナを助けるために、そして日本の安全保障のためにも、現状のウクライナ支援の在り方を再検討するべきではないでしょうか?