PLCを使ったデジタルツイン

世界中の工場で機器の制御で使われているPLC(Program Logic Controller)コントローラは、一連のシーケンスで動悸して動くように機械を制御するコントローラだ。産業用機械の制御で長い歴史があり、欧州のシーメンス、台湾のRockwell、日本の三菱電機などが代表的な企業で、中国大陸にも多くのメーカーがあるが、制御できる機械の数が小規模なものが多く、世界シェアは小さい。

华龙迅达は国産の大型PLCコントローラを開発している。PLCの技術は各社で互換できるようにある程度標準化されており、华龙迅达のPLCコントローラもIEC-61131-3標準やEtherCATなどの標準を採用しているが、加えて国産のLoongOSによるデジタルツイン機能を備え、稼働中の機器をVR空間上でモニタすることができる。

国産CPUとHarmony OS

华龙迅达製品は、CPUに龍芯中科が開発した中国製CPU,龙芯3A5000を採用している。CPUの命令セットに独自のLoongArchを採用したサーバー・産業用機器向けCPUで、Linuxカーネルを採用した同社のLoongOSで動作する。これで外国の知的財産に一切抵触しない部品・OS・PLCシステムを作っている、というのが华龙迅达の特徴だ。

PLCコントローラの制御を行うOSは华龙迅达がオープンソースのOpen Harmonyを元に自社開発したHualong OSを採用し、Harmony OSの開発元であるファーウェイと深く連携して開発している。(中国CSDNでの記事)

PLCとしても動作するが、動作状態のビジュアライズや仮想環境によるモデリング、データベース化やクラウド連携による結果分析、マルチデバイスの連携など、日本でもインダストリー4.0や製造業のDX化でよく挙がる機能を備えている。それぞれの機器をボトムアップに連携させるのでなく、先にHualong OSという統合環境があることにより、全体に対するセキュリティ担保や外部とのデータ連携、優先順位の整理含めた自動化がしやすくなる。

国策企業による国内向けデモンストレーションで終わるか、海外に広がるかに注目

Han’z Lazerほか、深圳の民間企業が開発している多くの製造用設備は、コストパフォーマンスに優れ、深圳市内の各工場や東南アジアでもよく見かける。また、異なるメーカーの機械が混在するなかで見かけることも多い。こうした形で中国の製造用設備はすでに海外進出しはじめており、深圳政府はこうした海外輸出を補助金などで大きく支援している。

一方でHualong OSのようなアプローチは、政府の意向を反映した国策企業が新しい環境をつくる、というかたちだ。ドラスティックなぶん見栄えは良いが、筆者の知る限り中国国内の工場でも導入事例を見ない。もちろん市場でのポジションを得られるような製品が、こうした研究開発から出てくることがないとはいえない。

「世界の工場」深圳と世界の距離を占う意味でも、今後も深圳での製造業展示会には注目だ。

(文・高須正和)