従業員による架空買い取りや現金不正取得などの問題に揺れるブックオフグループホールディングス(GHD)。中古書籍販売などのリユース事業を主に展開しているが、株主に大手出版社である講談社、集英社、小学館、大手書店の丸善雄松堂などが名を連ねていることが一部で注目されている。ブックオフが、一見すると利益が相反するとも考えられる新刊書籍の出版社、書店から出資を受ける背景には何があるのか。各社の見解を交えて追ってみたい。

 出版不況が叫ばれて久しいが、ブックオフGHDの業績は好調だ。2023年5月期決算は、売上高は前期比11.3%増の1018億円、営業利益は45.9%増の26億円、連結純利益は91.1%増の28億円と増収増益となっている。

 同社の歴史は波乱万丈だ。「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」の創業者として知られる坂本孝氏が1991年に創業したブックオフコーポレーション(現ブックオフGHD)は、当時は存在していなかった新古書店というビジネス形態を生み出し、チェーン展開。目利きが古本を一点一点精査して買取価格を決める古書店とは異なり、書籍の傷の有無など状態を見てアルバイト店員でも簡単に買取価格を決められるシステムを確立し、客は手軽に書籍を売れる一方、新刊のベストセラー本などを安く購入できる点などが好評を博し、瞬く間に急成長を遂げた。

 2004年には東京証券取引所の第2部(当時)へ上場を果たしたが、07年には坂本氏がリベート問題の責任を取って退任。10年代に入るとアマゾンやヤフオク!、メルカリといったECサイト、オークションサイトなどで手軽かつ安価に中古品が手に入るようになった影響もあり、ブックオフの業績は徐々に低迷。16年3月期からは3年連続で最終赤字となり、一時は経営危機も叫ばれるほどの苦境に陥った。

 業績回復のため、取り扱う商品ジャンルを拡大。また、住宅街の店舗では児童書を、ビジネス街の店舗ではワイシャツなどの男性用衣類やビジネスパーソン向け消耗品を充実させたりと地域密着型の店舗づくりを進め、19年3月期には黒字転換に成功。現在のブックオフGHDの事業別売上をみてみると、書籍が全体の約3割、トレーディングカードが約2割、アパレル、貴金属・時計等がそれぞれ約1割となっており、そのほか、家電、携帯電話、スポーツ用品、アウトドア用品なども一定の比率を占めている。

 店舗構成にも変化がみられる。従来型のブックオフに加え、トレカ・ホビー売場を拡張し家族連れが楽しめるスペースを備えた「BOOKOFF SUPER BAZAAR(ブックオフ スーパー バザール)」、三越など大手百貨店内の富裕層向け店舗「ハグオール」、ジュエリーオーダー&リフォーム スペシャリティストア「aidect(アイデクト)」、トレカ専門店「Japan TCG Center」など、多彩な形態の店舗を展開している。

過去には著者への利益還元を示唆

 そんなブックオフGHDの株主構成が一部で注目されている。同社の23年5月期の有価証券報告書によれば、発行済株式の総数に対する所有株式数の割合は、講談社、集英社、小学館が各4.21%、丸善雄松堂は5.98%、丸善ジュンク堂書店の親会社・丸善CHIホールディングスをグループ関連企業として持つ大日本印刷は6.49%、図書館流通センターは3.79%となっている。また、ブックオフGHDも丸善CHIホールディングスの株式を保有している。

 これらの企業がブックオフコーポレーション(当時)に出資し株式を取得したのは09年のこと。それまで一般消費者から買い取った中古書籍を安価に販売するブックオフは出版社や一般書店の利益を侵食する存在とみられていたため、出版業界では驚きをもって受け止められた。

 大手出版社社員はいう。

「当時、株主になる出版各社もブックオフも著者への利益還元に取り組むことを示唆する発言をしており、ブックオフで販売された書籍について売上の一定割合を出版社を通じて著者に還元する仕組みをつくろうとしているのではないかとみられた。また、出版社が書店から返本される大量の書籍をブックオフで安く再販する狙いもあるともいわれた。だが、現時点では出版社とブックオフが何か協力して取り組んでいるような動きはみられない」