死の商人は裏返せば、人がやりたくないことをやってビジネスにする面でもあります。私の知るあるユダヤ人は牛や豚などから出る脂から工業製品にする事業をしていますが、彼らが築いた財産は果てしないものがあります。なぜ動物脂からそれだけの資産を形成できたかといえば動物の解体を経るビジネスは一般の人が誰もやりたくなかったので独占できたのです。さらに創業者家系のたゆまぬ投資姿勢は強烈でした。特に大きな事業になったのがバンクーバーの競馬事業と不動産賃貸事業であり、本業を起点として大グループ会社を組成していくのです。
世界に君臨するユダヤ人の政界、財界での活躍ぶりとはまさにこのような経緯を辿りながら圧倒的成功者となり、社会の中でどう思われようが強みを増していく、そういう生き方なのです。
ネタニヤフ氏がガザ地区に完全勝利するまで譲らないという思想はユダヤの魂である「信じられるのは自分だけ」という考えを地で行っているように感じるのです。そしてネタニヤフ氏は1948年にようやく得たユダヤ人の地をカラダを張って守ろうとしているわけでそこには論理も妥協も国際世論への協調もないのであります。
ただ、私が懸念しているのはイスラエルが現在対峙しているのは宗教戦争の色合いが濃いわけで仮にガザ戦闘でイスラエルが一定の成果を上げたとしてもそれで終わることはまずないだろうという点です。この戦闘が始まった時はいつもの3日戦争で終わるのかと思っていました。それは双方、それが泥沼になることが分かっていたので「お互い様」になった時点で停戦していたのです。ところが今回は暴走列車のようなブレーキが全く効かない状態に見えます。
イスラエルの敵はハマスだけではないのです。背後にはいくらでもいるしモグラたたきのようなものなのです。西側諸国が冷たい姿勢をとればとるほどイスラエルは頑なになり、祖国防衛をより意識することになるのでしょう。トランプ氏が大統領になればイスラエルには強力な追い風になりますが、ハリス氏ならばイスラエルの孤独感はより強まるでしょう。
個人的にはネタニヤフ氏はアメリカ大統領選挙の結果が出るまでは現状のスタンス、つまり敵と徹底的に対峙する姿勢を貫き、アメリカ大統領が決まった時点で大きな判断をする節目を迎えるように感じます。ただ、トランプ氏が大統領として中東政策に首を突っ込むとなればそれは中東とビジネスディールをするか徹底的な敵対関係になるか、黒白はっきりした要求を突き付けるわけですからそれはそれで予見が難しい外交だとも言えそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月29日の記事より転載させていただきました。