まずできるのは専門商社と組ませることです。無論手数料はかかりますが、自社でやるよりも専門商社を窓口にしたほうが圧倒的に楽です。無論商社任せではなく製品の説明などはメーカーが積極的にやるべきです。海外進出でも商社はアテになります。

ただ、たちが悪い専門商社もいるのでそのスクリーニングが大変です。本来防衛省で専門商社のデータベースを作っておくべきです。

防衛省はメーカーに比べて商社を低く扱っています。防衛産業振興という場合殆どがメーカー対象です。業界団体である防衛装備工業会は商社は正会員になれません。そのくせ見本市のアテンドとか商社に頼らないとなにもできない。

また防衛省の研究の目利きが必要です。基礎研究と装備化に向けのての実証研究、装備化を前提の開発を峻別して、将来の世界の軍事技術の発展と、我が国が何をつくるべきかという視点で審査をできる第三者機関が必要だと思います。

根源的な問題は防衛省の入札や契約の煩雑さの解消です。それと入札のいい加減さです。特に空自の需品で多いのですが、「同等それ以上」という文言を悪用して、現場が欲しいアイテムを明記しているのに、インチキ商品を安く入れて入札をとる悪徳業者が横行しています。特に空自に多いから組織に問題があるのでしょう。

例えばミステリーランチの27リットルの「ツーデイ アサルト バックパック」と指定されており、入札業者がそれを応札しているのに、別の業者が27リットルの別なバックパックを半額ぐらいで提案して取ってしまうわけです。

現場は理由があって特定のモデルを指定しているわけです。例えばこれがY字型ジッパーを採用して云々と細かく指定してそのようなインチキができないようにすべきです。

入札の公平性を担保するための「同等あるいはそれ以上」というのは、本来例えば単三電池のようなものに使うべきです。どこのメーカーでも似たような性能だからです。

更に申せば、正規の輸入代理店を通した製品であることを明記すべきです。昨今の海自の短機関銃の調達ではそのような明記がありましたが、実際現場ではあまり使用されていません。このため製品の数を確保しないまま、落札したらAmazonとかで並行業者から調達するとかがあります。この場合問題なのは製品が軍の放出品だったり、欠陥があった場合に交換やリコールができないことです。

特に銃器などで米国の市場から買った場合、メーカーの最終使用者証明書も取れずメーカーの保証が受けられない場合もあります。

富士学校に納品されたタクティカルライトが盗品だったり、空自の採用した暗視装置の光電管がロシア製で極めて寿命が短かったりなどもありました。

きちんと仕様書を書ける人間の育成と、インチキの「同等ないしそれ以上」を排除する仕組みが必要です。実際需品ではこういうクズのような業者が少なからず存在します。こういう業者を調達から排除する仕組みも必要です。

かつては国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)が技術開発を一手に担っていた。今は新興技術の新陳代謝のスピードに後れを取らないように官民の共同研究にも力を入れる。

これは嘘。

DARPAは昔から目利きをして金を出す組織です。自身で研究開発をやりません。このような目利きこそが必要ですが防衛省や自衛隊にはそれができる人材がいません。

だから不要でもやりたい研究、絶対装備に結びつかない無駄な研究、防衛省でもできる研究で税金を浪費してました。

そもそも海外視察をご褒美としか思っていなかった組織で、まともな目利きができる人材がいるわけ無いでしょう。

慶大の森聡教授は「米国は複雑な許認可制度や手続きの遅さ、不透明さを改めてきた。意思決定を迅速にし戦略的投資で民間投資を誘うなど体力の弱いスタートアップと協力しやすくした」と指摘する。競争入札なしで契約できる制度もある。

米国は国防総省や中央情報局(CIA)がスタートアップを資金面で支える。ドイツや英国でも政府が資金を投じて企業を育成する体制があり、日本も参考にする。

多分無理ですよ。ご案内のようにそういう目利きができる人材がいないし、失敗を極端に恐れる組織風土がありますから。更に申せば天下り受け入れる既存の防衛産業が優遇されますから。

日本では軍民両用の「デュアルユース」技術の活用に慎重な意見が多かった。

ソニーは日本の誇る軍事企業です。ソニー自体は否定していますが、世界に光学電子センサーを「汎用品だから」と言い訳して荒稼ぎしてきたのはソニーです。そしてイスラエルやロシア、中国にも売りまくってそれが戦場で使われてきた。

ソニーは自分たちは平和企業ですという顔をしていますが。

それを政府も防衛省も等閑視してきた。

実はキャノンが同様のセンサーを開発して、その用途を民需に絞りたいからキチンとしてくれと経産省に相談したらソニーが慌てたという話も聞こえてきます。

実際に世界で成功している、パナソニックや帝人、YKKなどのケースを防衛省や経産省はキチンと研究、把握すべきです。対してなぜ国内防衛産業がだめなのか。

長年そういうこととをやると言ってきてできないのが防衛省です。

【本日の市ヶ谷の噂】 世界三大海軍の一つを自称する威風堂々の我が帝国海軍海上自衛隊の護衛艦では定員にはいっている医官が乗っていないのは当たり前で、イージス艦ですら乗員の充足率は6割程度、との噂。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。 海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態

月刊軍事研究8月号に防衛省、自衛隊に航空医学の専門医がいないことを書きました。 軍事研究 2024年 08 月号

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

「敵に手の内をさらさない」という防衛省、自衛隊の「敵」は国会と納税者か  新聞各紙 残念な防衛関連の未検証記事 日本の報道の自由度が低いのは記者クラブのせい 次期装輪装甲車、AMV採用を検証する その2 AMVのライセンス生産によって日本の装甲車事業は壊滅する 次期装輪装甲車、AMV採用を検証するその1 駿馬を駄馬に落とす陸自のAMV採用

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

航空専門医がいない空自に戦闘機開発はできない やる気のある医官が次々に辞める自衛隊の内情

編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。