パリ・オリンピックの開会式は、マリー・アントワネットの生首という悪趣味な演出で開幕したが、驚いたのはこれをほめる日本人が多いことだ。フランス人がフランス革命を美化するのはしょうがないが、日本人が美化するのは世界の笑い物である。

フランス革命は「自由を勝ち取る革命」ではなかった

「血の革命で勝ち取った自由」というのは、たぶん菅野氏が子供のころ学校で教わった話だろうが、フランス革命前にも言論の自由や結社の自由はあった。それは何より1789年に三部会が招集され、そこに選挙で選ばれた一般市民の代表が参加したことで明らかだ。

争点は自由でも平等でもなく、税制改革だった。当時のブルボン家は絶対王制とはほど遠いもので、各地方の「社団」は度量衡までバラバラで、地域を超えた取引もできなかった。社団は江戸時代の藩のような独立国家で、国王には実質的な徴税権がなく、実効税率は5%程度しかなかった。

特にルイ15世が詐欺師ジョン・ローにだまされ、紙幣を大量に印刷して財政が破綻し、ハイパーインフレになった。その後を継いだルイ16世は、免税だった僧侶や貴族にも課税しようと三部会を招集したが、何も決められなかった。これに反発した民衆が暴動を起こしてバスチーユ牢獄を破壊したが、そこには政治犯はいなかった。