コクのあるカレーを作るポイント

ここまで、カレーをより美味しく感じさせるコクについて見てきました。バランスの取れた五味、適度なとろみと重厚感とともに、重視したいのが複雑に絡み合った「香味成分」だということがわかってきました。

五味とは違い「コク」の受容体はまだはっきりと解明されていません。そのため、現在の科学的な知識でコクのある美味しいカレーを作るには「香り」を使いこなしていくのが最大のポイントのようです。

カレーを美味しくする要素のひとつ「香り」には、香味野菜が元々持っている成分と肉のうま味成分から感じられる香り、さらに過熱した脂肪によって発生する香りが突出することなく絡み合っていることで、何がいいのかわからないけれどいい香り!というスープを作るのはまず大切ということがわかりました。

次に、適度に脂肪のある好みの肉を香ばしく焼いたものと合わせると、香りはより複雑になり、コクを強めることができます。

市販のルーを使う時でも香味野菜の使い方肉の焼き方などを工夫することで、一段と美味しいカレーにすることができるでしょう。あとは好みで、何を入れたかわからない程度の「かくし味」として果物などの香り成分を加えることで、コク深いオリジナルなカレーを作ってみてください。

香味野菜や果物などの食材や調理方法を工夫して、オリジナルでコク深い、美味しいカレーを作ろう。
香味野菜や果物などの食材や調理方法を工夫して、オリジナルでコク深い、美味しいカレーを作ろう。 / Credit:wikimedia

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参考文献

食品のコクとは何か おいしさを引き出すコクの科学
https://www.amazon.co.jp/dp/4769916701

元論文

食べ物の「こく」を科学するその現状と展望
https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu.54.102

ライター

百田昌代: 女子美術大学芸術学部絵画科卒。日本画を専攻、伝統素材と現代素材の比較とミクストメディアの実践を行う。芸術以外の興味は科学的視点に基づいた食材・食品の考察、生物、地質、宇宙。日本食肉科学会、日本フードアナリスト協会、スパイスコーディネーター協会会員。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。