よくカレーの味を表現する際に、コクという言葉が使われます。
食品メーカーは、カレー関連の商品に対しては、よりコクのあるカレーに見える、パッケージデザインにも注意を払い、製品名や説明文にも「コク」という言葉を多用します。
実際、皆さんもコクというものを意識して料理を味わったことがあるでしょう。
しかしコクとはなんでしょう?
コクとは味わった時に重厚感や広がりを感じさせるものであり、主要な味覚である甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の五味とは別の要素だとされています。
これこそがコクを与える調味料だ!というものもありません。
実際聞かれると上手く説明できない、コクとは一体何で、コクのあるカレーはどうやって生まれるのか、今回は料理のコクの正体について解説します。
目次
- カレーにコクを与える要素とは?
- コクのあるカレーを作るポイント
カレーにコクを与える要素とは?
カレーの美味しさをどこに感じるかは人によって様々です。何を美味しいと感じるかは生まれ育った地域の味の好みに左右されることもあり、同じルーを使ったカレーでも「塩味が足りない」と感じて塩やソースをかけて食べることで、より美味しさを感じる人もいます。
とはいえ基本は味の5つの要素のバランスが取れていることが望ましく、いずれかが突出していると美味しさを感じにくいものです。ここでは味の要素を整えた上で必要な、コクをもたらす要素について見ていきましょう。
要素その1 香り
コクを感じさせるために必要な要素のひとつが「香り」です。これはカレーに使われるスパイスとは別の働きをする物質で、そのうちのひとつにセロリの香味成分を作る化合物「フタライド」があります。
セロリの味や香りがわからない程度に、カレーの元となるスープにこれらの香り成分を加えたところ、被験者からは「厚み、深みがある」「インパクトがある」「まとまりがある」「持続性がある」「充実感がある」「複雑である」など、コクが増したという感想が寄せられました。
また、ニンニクに含まれる「アリイン」が味に厚みや広がりを持たせることや、タマネギに含まれるコレステロールに似た化合物「植物ステロール」に香気物質保持効果のあることがわかっています。
さらに、フルーツの持つ香り成分もカレーにコクを与えます。リンゴを加えていることを宣伝するカレールーを使っても、特にリンゴの味や香りはしません。しかし、リンゴの持つ香り成分にコクを増す働きがあるため添加されているのです、カレーにマンゴーチャツネを加えるのも、マンゴーの香り成分でコクを増すための隠し味であるといえるでしょう。
いずれも、それぞれの味や香りがわからない程度に加えることで複雑な香りを作り出し、カレーにコクを与えています。
要素その2 油脂
野菜や果物の香りによる複雑さだけでなく、香味野菜を炒めるために使う油や肉の脂肪分も、カレーにコクを与える働きをしています。
肉のうま味成分であるグルタミン酸とイノシン酸の相乗効果は、うま味を感じるだけでなく、肉を口に入れた時の口中香を強め、うま味物質による刺激の持続性を増すことがわかっています。そこへ脂質由来の動物種特有の香気が加わることで、多くの香りの刺激が嗅覚を刺激します。
例えば加熱した黒毛和牛の脂肪は、甘い香りをもたらすラクトン類、メイラード反応によるアルデヒド類による香ばしさなどを吸着しているため、食肉の強いコクを感じることになります。動物性の脂肪は、そのうま味と香りによってカレーのコクを強めているのです。
香ばしい香りが添加されるとコクが強まるのは、最初にタマネギを飴色になるまで香ばしく炒めるのは何故かという疑問にも答えてくれます。
要素その3 濃厚感ととろみ
さらさらとしたスープ状のカレーより、とろみがあり重厚感のあるカレーに、よりコクの強さを感じられないでしょうか。これは、とろみのある食品のほうが口中に長く留まることで味がゆっくり広がり、コクとして感じることができるためです。
とろみは重厚感も生み出します。市販のカレーの素が油脂と小麦粉で作ったルーであることもうなずけます。心理的な効果として深みのある褐色に仕上げられていることにも注目で、視覚的にも重厚感を感じられるように仕上げられているのです。