米大統領選の結果は、毎回といっていいほど、「そうなるだろうな」といった程度の事前予想は外れる。「銃撃事故でトランプ氏(78)の圧勝が確定。バイデン氏(81)のままなら民主党は惨敗」から「ハリス氏(59)が追い上げ。老々対決から世代対決へ」と、局面ががらりと変わってしまいました。

トランプ氏は罵詈雑言を吐いてばかりいると負ける。全世界が大変動期に入り、発想の大転換が必要になったこの時代には、ハリス氏のような社会の中核的世代の考えで政治経済政策を行い、責任を負ったほうがよいと、私は思います。

トランプ氏が大統領になったら、財政金融も膨張政策をとる。世界は一段と予測不可能な時代に向かう。こうした時代には世代交代がよい。為替相場の見通しより、こうした論点で経済を考えてほしい。

日本はどうか。「実勢ベースでインフレ率は3%くらいになっている。日本経済もインフレの時代に入ってきた。もっと早く異次元緩和政策から転換すべきだった。そもそも異次元緩和政策は必要がなかった」(週刊エコノミスト)。これは山口広秀・元日銀副総裁の批判です。

それにもかかわらず、日銀が身動きをとれないのは、アベノミクス(財政金融の異次元膨張政策)の負の遺産の結果です。なぜもっと、市場関係者、エコノミストらは、アベノミクス批判をしないのか。アベノミクスに期待をかけるような発言、主張をした時期があったため、批判を控えているのでしょうか。

「基調的な物価上昇率が2%を維持できるかどうか」などが金融政策の中核的なテーマであってはならない。「日本の経済力、構造を考えれば1%程度が望ましい上昇率だろう」(山口氏)。こうした議論を次期総裁を目指す政治家はすべきなのです。

物価上昇率よりも、「人口減少には歯止めをかけるような背伸びした目標を掲げて、過剰な政策資源(財政)を投じるのではなく、人口減を所与として、経済社会のあり方を考える」(小峰隆夫氏)のような議論が必要なのです。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。