イスラエルのネタニヤフ首相が、議会演説を終えた後、(事実上の)民主党大統領候補のハリス氏、共和党大統領候補のトランプ氏と面談した。立ち位置の違いを反映した対応の違いが出た。

トランプ氏とネタニヤフ首相 同首相インスタグラムより

ハリス氏は、ガザにおける惨状に懸念を表明したうえで、停戦合意を促した。記者の前でその様子を披露した際に、「私は沈黙するつもりはない」という描写を付け加えたことによって、ネタニヤフ首相に挑戦的な姿勢で臨んだことが印象付けられた。

ハリス氏はバイデン政権の副大統領である。ガザの惨状の認知と、停戦合意の促進は、バイデン政権が取り組んできている路線である。したがってこのこと自体によって、ハリス氏はイスラエルを擁護しているバイデン政権の路線を変更する意図を表明したわけではない。ましてイスラエルのジェノサイド条約違反やネタニヤフ氏の戦争犯罪にふれるようなことを述べたことを全く意味しない。

ただ「私は沈黙しない」という発言によって、共和党のトランプ氏が「沈黙する」だろうことを見越して、自分がトランプ氏とは違うことを印象付けた。これは選挙戦術としては意味があっただろう。

トランプ氏は第一期政権の際の政策のため、親イスラエル寄りの印象が強い。ハリス氏が、イスラエルとの親密さを競ってみたところで、トランプ氏から票を奪えるはずはない。それよりもスウィング州(都市部)のマイノリティ層やリベラル層の票を狙った方が合理的である。

ネタニヤフ首相と会談するカマラ・ハリス副大統領同副大統領インスタグラムより