先陣を切って大規模な移転を行った東洋大学

 先陣を切って大規模な移転を行ったのが東洋大学だ。05年に文系5学部の1~2年次の課程を朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)から3~4年次と同じ白山キャンパス(東京都文京区)へ移転。さらに17年には赤羽台キャンパス(東京都北区)に情報連携学部を新設し、今年4月には生命科学部と食環境科学部を板倉キャンパス(群馬県板倉町)から朝霞キャンパスへ移転させた。こうした取り組みが功を奏し、東洋大学の志願者数は増加傾向にある。21年度に8万9821人だった一般選抜の志願者数は24年度には10万2910人と10万人を突破。私立大学としては全国4位の数字となっている。

 東洋大学の志願者増加は、都心回帰が大きな理由なのか。

「東洋大学が志望者を大幅に増やした要因としては、都心回帰が大きいです。05年にそれまで1~2年次の授業を展開していた埼玉・朝霞キャンパスの文系5学部を、都心の白山キャンパスに集約しました。埼玉・朝霞キャンパスだと、神奈川県や東京西部から通学するには不便です。それが白山キャンパスに集約され、通学しやすくなりました。

 ただ、東洋大学の志望者増加はキャンパスの都心回帰が全てではありません。都心回帰以外に 時代のニーズにあった学部を新設していったことが大きな要因です。加えて、競合する大学のうち、日東駒専の専修大学と駒澤大学は東洋大学ほど学部新設に熱心ではありませんでした。さらに2010年代以前は東洋大学よりも人気が上だった日本大学で不祥事が相次ぎます。日大は総合大学といいつつ、各学部・キャンパスの独立性が高く単科大学に近いことを受験生も知るようになり、人気を落としました。こうしたライバルの動きの遅さや人気低下も東洋大学の志望者増加につながっています」(石渡氏)