CMタレントの採用基準
成田氏はイェール大学助教授として教鞭をとるほか、半熟仮想株式会社代表という経営者としての顔も持つ。東京大学卒に米マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。専門はデータ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザインで、これまでに一橋大学客員准教授、スタンフォード大学客員助教授、東京大学招聘研究員、独立行政法人経済産業研究所客員研究員などを兼歴任。内閣総理大臣賞、オープンイノベーション大賞、MITテクノロジーレビューInnovators under 35、KDDI Foundation Award貢献賞などを受賞し、著書も数多く出版。現在、メディアで引っ張りだこの 人気文化人でもある。
こうした経歴もある署名人だけに、企業がCMに起用するのは不思議ではないが、今回のキリンによる起用についてSNS上では以下のような声があがっている。
<高齢者のはしくれとして、私に集団自決を迫る自称経済学者をCMに起用する企業の製品は買いません>
<老人に集団自決をすすめる人物をCMに起用するキリン。つまり人権なんてどうでもいいんですね>
<倫理観の欠如した論説をする学者を起用して垂れ流すのって迷惑YouTuberと同じレベル>
<テレビや企業CMで扱うことでさも正しいように論説、おこないをしている学者のように見えるぶん、社会に与える影響は大きく悪質性がある>
<中の人に起用理由が聞きたい>
大手食品メーカーのマーケティング担当者はいう。
「特に一般消費者に近い商品であるほど、CMやキャンペーンに起用するタレントの好感度を重視する。今回のキリンのキャンペーンでは小峠英二と若槻千夏が起用されているが、この2人はまさに今、好感度が高いタレント。成田氏もイェール大学助教授という信頼できる肩書がありメディア露出も多く、さらに政府系の仕事もしており、タレントと比べて文化人はギャラもけた違いに安いので、企業が起用したくなるのは当然。
企業は人選にあたっては過去に不祥事や問題を起こしていないのかをリサーチするが、企業によって採用基準がどれくらい緩いか厳しいかは差がある。また、CMの人選に経営層の承認まで必要なのかどうなのかなど、どの階層まで決裁が必要なのかも企業によって異なるし、上層部の関心・関与の度合いも濃淡がある。高齢者に関する発言についてキリンの宣伝担当は認識はしていただろうが、総合的にみると特段に問題はないと判断したということだろう。確かにX(旧Twitter)上では『#キリン不買運動』というハッシュタグがトレンド入りしているものの、実際に『氷結無糖』の売上に影響をおよぼすレベルなのかどうかは疑問。それほど影響はない可能性も考えられる」
学識者を起用したCMが物議を醸した例としては、2020年に国際政治学者の三浦瑠麗氏を起用した「Amazonプライム」の例が記憶に新しい。このときは三浦氏が過去に徴兵制の導入を主張したり、大阪に北朝鮮の工作員が潜伏しているといった発言をしていた件などが取り上げられ、Twitter(当時)上で「#Amazonプライム解約運動」がトレンド入りした。
「いわゆる『歯に衣を着せない』系の学識者をCMに起用するというのは、その人の過去の発言を掘り起こされるなどリスキーな面があるのは事実。とはいえ、一部ネット上で批判が上がったとしても現実的にはほとんどの人は目にせず認識すらしていないケースも多く、実際の販売には影響がないというケースが大半。特に大手メーカーのアルコール飲料になると販売数のボリュームがときに数千万~億単位にもなり、とてつもなく大きいので、一部ネット上の動向というのは無視できるレベルにとどまる。今回の成田氏の件も、キリンはあまり気にしてはいないと思われる」(同)
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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