中途半端な形の発送電分離が根本原因
大手電力が火力発電を最大限止める努力をしないのには経営上の理由がある。
「電力の需給調整をするのは送配電会社だが、日本の発送電分離は中途半端な形だ。例えば、九州の送配電会社(九州電力送配電)は親会社が九州電力で、火力発電所を動かせば動かすほど儲かる。火力を止めればそれだけ儲けが減る。しかし、九州電力と資本関係のない外部の太陽光発電は止め放題。止めても自分たちは痛くもかゆくもない。自分たちの火力発電も一応ルール通りには止めるが、それ以上は減らさない」(飯田氏)
2012年7月から施行されたFIT(固定価格買取制度)法では、太陽光や風力などの再エネ電力を、長期固定価格で電力会社が買い取ることを義務付けていた。このFIT法は2017年4月に改正され、再エネ事業者からの買取義務が電力会社から送配電事業者に変更された。
北海道から沖縄まで10区域に分割され、それぞれの区域には1社の送配電事業者がある。ところが、例えば「東京電力パワーグリッド」の株主は東京電力ホールディングス100%であり、「関西電力送配電」の株主は関西電力100%である。他の地域もすべて同じ形だ。つまり、需給調整を任されている送配電事業者は、資本関係上、中立的な立場ではない。親会社の利益を優先したり、グループ内の火力発電をできるだけ止めないようにしたりするのは、会社にとって合理的な考え方なのである。
資源エネルギー庁の3月11日発表によれば、2024年度の全国の出力抑制量見通しは、昨年の1.4倍に増えるとのことだ。
「このままいくと、2030年には北海道は太陽光と風力の74%抑制とか、東北も85%抑制、九州も71%抑制などという具合に、ほとんど増やせない状況になる」(飯田氏)