黒坂岳央です。
「リモートワーカーになり、生活費を抑えるために地方移住をしたら大変な経験をした!」といったエピソードがSNSを中心に繰り返し投稿されている。中には確かにそれはあるかもと思いながらも、アクセス稼ぎのための作り話にしか思えないものもある。そして都会では起こり得ないようなトラブルなど、多くは否定的な意見が目立つ。
筆者は生まれも育ちもずっと都会だが、独立を機に熊本県の田舎に移住した。世の中によくある「地方移住の現実」について取り上げたい。
近所の過干渉は「ない」都会からの移住者が驚くことに「玄関を勝手に開けて野菜を置いていく」「やたらと干渉して煩わしい」といった意見を見る。しかし、これは誤解だといっていいだろう。こうしたエピソードは「すでにご近所づきあいがある実家暮らしで起きる」に限定する話である。
自分を含め、新しく引っ越しをしてきた家庭に勝手に上がり込んでしまうような人はどれだけ田舎でもほぼ存在しないといっていい。田舎と言っても玄関には鍵がついているし、今どきプライベートに干渉するべきでないという感覚は地方在住者を含めて誰でも持っている。
この手のエピソードはすでに見知った間柄の近所の人が、畑で取れた野菜などを持ってきてくれるというものに尾ひれがついて「まったく面識がないのに玄関を開けて上がり込んでくる」という作り話に発展したものと考えられる。
また、自分は近所が牛や豚の飼育、野菜や果物農家ばかりの田舎住みだが、これまで過干渉された経験などない。自分は現地の方言を使えないので都会から来たことはすぐ相手に伝わるが、それで妙な距離感を取られたりしたことも一度もない。むしろ、大阪の方が「どこから来たか?」で他県では見られない距離感になる可能性の方がよほど多いだろう。